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現在のCRMシステムは,ユーザー企業のマーケティング業務全体を支援することが求められている。企業のマーケティング業務を支援するCRMシステムとはどんなものなのか,それを開発するためにITエンジニアは何をすべきなのかを解説する。

 CRM(Customer Relationship Management)システムは,数年前の「ブーム」と言われる状況にはないが,今やIT投資全体の中の重要な一分野として,企業情報システムに当然のように組み込まれるようになった。このため,多くのITエンジニアにとって,今後もCRMシステム開発プロジェクトにかかわる機会は多いだろう。

 CRMシステムは,営業担当者やコールセンター,Webなどのチャネル(顧客接点)における顧客データ(顧客ごとの売上や顧客の属性データ)の収集・管理・分析を通じて,各チャネルでの商品の販売促進,営業,保守・修理といった活動を実行・支援するシステムである。言い方を変えれば,企業の「マーケティング業務」そのものを支援・実行するシステムにほかならない。

 そうである以上,CRMシステム開発にかかわるITエンジニアは,企業のマーケティング戦略に対する理解やマーケティングの基本的な知識,顧客の購買行動の変化などをきちんと押さえておく必要がある。そこでPart2では,CRMシステム開発にかかわるITエンジニアに必要なマーケティング知識や,マーケティング業務に密着したCRMシステム開発を成功に導くための方法を解説する。

マーケティング業務全体を支援

 「CRM」という言葉は1990年代後半に登場した。それ以降,いくつかの段階を経て,現在のCRMシステムは「第3世代」にある,と筆者らは考えている(図1)。

図1●CRMシステムの変遷<br>2003年以降に登場した第3世代のCRMシステムは,企業のマーケティング活動全体の支援・実行を目指している
図1●CRMシステムの変遷
2003年以降に登場した第3世代のCRMシステムは,企業のマーケティング活動全体の支援・実行を目指している
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 90年代後半の「第1世代」のCRMシステムは,単体チャネル(顧客接点)の改革が中心だった。具体的にはSFA(Sales Force Automation)システムによる営業担当者の業務効率化や,CTI(Computer Telephony Integration)によるコールセンターの業務効率化,Web/電子メール・チャネルの構築(eCRM)などだ。

 2000年頃には,顧客データベースを核にして複数のチャネルを統合する「第2世代」のCRMシステムを構築する企業が現れ始めた。Webで収集した資料請求情報をコールセンターや営業担当者に見込み情報として渡す,といったチャネル間での情報共有による売上向上や,チャネルの組み合わせとチャネルにかける比重の変更によるコスト削減などを目指した動きである。

 2003年頃になると,各チャネルで収集した顧客データの分析を基に,攻めるべきターゲット市場や顧客セグメント,その攻略アプローチや優先順位付け,各チャネルに期待する役割といった「マーケティング戦略」を見直し,その結果をチャネルでの活動に反映させる動きが始まった。

 顧客データを分析してマーケティング戦略を見直し,それをチャネルで実行して結果を分析し,再びマーケティング戦略を見直す――。こうしたマーケティング・サイクルを回すことで,企業全体の売上向上や収益性の向上を目指す動きだ。このマーケティング・サイクル全体を支援・実行するシステムを,筆者らは「第3世代」のCRMシステムと読んでいる(図2)。

図2●第3世代 CRMシステムのイメージ
図2●第3世代 CRMシステムのイメージ
2003年以降に登場した第3世代のCRMシステムは,企業のマーケティング活動全体の支援を目指している

 第3世代のCRMシステム構築に取り組んでいる企業は,まだ多くはない。しかし,CRMシステム導入の効果を最大限にするためには,上で述べたような「第3世代」のCRMシステムの構築が不可欠,と筆者らは考えている。

戦略を明確にする

 第3世代のCRMシステムを構築する場合,まずはその時点での企業のマーケティング戦略を明確にしなければならない。例えば,現在儲かっている,あるいは儲かる可能性があるターゲット市場/顧客セグメントを明確にし,どのチャネルを使って顧客にリーチするのか,どんなメッセージを伝えるのか,訴求ポイントをどこに置くのか,といった攻略アプローチを定義しておく。こうしたことが明確になっていないと,CRMシステムは構築できない。

 もちろん,市場や顧客は常に変化しているため,どの企業にとっても普遍的なマーケティング戦略など存在しない。しかし,基本的なマーケティング戦略やそれを達成するための機能があいまいなままでプロジェクトを始めてしまうのは極めて危険である。

 筆者らがよく目にするダメな「CRM企画書」には大きく2つのタイプがある。「顧客満足度向上」とか「売上増達成」といった抽象的なキーワードが並ぶ「コンセプト型」と,パッケージの機能が並ぶ「ツール型」である。いずれもビジュアル的には優れているが,実現性やビジネスとしてのリアリティに欠ける。マーケティング戦略を明確にせずに,「コンセプト型」や「ツール型」の企画書だけでプロジェクトを始めてしまうと,途中でそもそも何を目指していたのか分からなくなり,システムは導入しても効果が出ない,あるいは使われない状況に陥ってしまう。

 第3世代のCRMシステムは,データ分析中心のマーケティング・サイクルを支援・実行するものである。このため,企業のマーケティング業務そのものも,顧客データ分析に基づくよう改革しなければならない。業務改革は決して簡単ではないが,それが成功しなければ,CRMプロジェクトの成功はおぼつかない。