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信頼性の高いシステムを維持するためには,常に品質の高い運用をし続けなくてはならない。ポリシーベース自動運用管理を取り込むことで,システム障害が発生した際の対応を効率化するなどのメリットが得られる。

 ポリシーベース自動運用管理とは,統合システム運用管理ミドルウエアが提供する機能の一つである。この機能を使うと,稼働中の業務システムでシステム障害などの問題が発生した場合の対策を,統合システム運用管理ミドルウエアに自動的に実行させることができるようになる。

ポリシーベースと手順書による運用の違い

 ポリシーベース自動運用管理を採用することで,システム管理者は,業務システムに特定の問題が発生した場合の対策を,プログラムが解釈できるルール(ポリシールール)として,システム運用設計時に記述することができる。記述したポリシールールを統合システム運用管理ミドルウエアに入力すると,統合システム運用管理ミドルウエアが,稼働中の業務システムを構成するハードウエアやソフトウエアを監視して問題の発生を検出し,入力されたポリシールールに従って自動的に対策を実行する。

 一般に,業務システム全体を統括するシステム管理者は,システム運用設計時に「こういう現象が発生した場合には,こういう手順で一連の作業を実行する」といった問題発生時の対策を運用手順書にまとめる。そして,障害発生時には,業務システムの監視を行うすべてのシステム管理者がこの運用手順書に従い,発生した問題から業務システムを復旧する作業を行う。

 ポリシールールも,統合システム運用管理ミドルウエア(プログラム)で解釈し,自動実行できるように記述するという点を除けば,原理的には運用手順書と同じである。運用手順書と同様にポリシールールも,記述する時点では作業の対象となるハードウエアやソフトウエア製品が決まっていない場合がある。また,実際のシステム運用の現場では,発生した問題に対する最適な対策は,豊富なノウハウを持つシステム管理者の判断で選択されることが多い。ポリシールールは,このようなシステム管理者の経験に基づくノウハウや判断もルール化できる。具体的には次の2点がポリシールールの大きな特長である。

 第一に,ポリシールールの中では,個々の作業の対象となる製品を,抽象的な業務システム構成(モデル)に対する作業として指定できる。ポリシールールには,例えば「業務システムXのDBサーバー」「業務システムYのAPサーバー全部」といった書き方が可能であり,実際にどのサーバー機で稼働中のどのミドルウエアかを,具体的に指定する必要はない。どのサーバー機に対策を行えばよいかなどは,ポリシールールに従って対策を実行するときに,統合システム管理ミドルウエアが自動的に判断してくれる。そのため,ポリシールールは,業務システムを構築する前から記述しておくことが可能である。

 第二に,ポリシールールには問題への対策の全体を記述できる。運用管理の現場では,問題に対して二つ以上の対処方法があり,どの対策を実行するかをシステム管理者が決断しなくてはならない場合が多い。そのような場合,問題がどこで(例えばどのサーバー機で)発生したのかや,過去に同様の問題が発生したときにうまくいった対処法などのノウハウを持つシステム管理者が,状況を確認したうえで,どの対処法を選択するかを決断しなくてはならない。ポリシールールは,そういう場合にシステム管理者が迅速に決断できるようにガイドする手順も含めて,全体の対策を記述できるように工夫されている。

ポリシーベース自動運用管理のメリット

 ポリシーベース自動運用管理を導入することにより,次のように,システム管理者の運用管理作業の大幅な効率アップが期待できる。

 ポリシールールとして記述された障害対策は,統合運用管理ミドルウエアが自動的に実行するので,管理者が運用手順書に従って作業を細かく実行する必要がなくなる。そのため,「問題発生の見逃し」「運用手順書の誤解」「操作ミス」などを防いで対処が迅速になるだけでなく,運用管理作業のための教育を受ける負担が軽くなる。特に人の判断が介在しない定型的な運用管理作業については,ポリシールールを記述して自動化すると,復旧までの時間が短縮できるなど,大きな効果がある。

 ポリシーベース自動運用管理は,特に多数の製品の組み合わせで成り立つオープンシステムにおいて有効である。オープンシステムでは,業務システムを全体として高信頼にするためには,多数の製品間で整合性を保つように対策を実行しなくてはならない。そのため,システム管理者は,製品ごとに異なる管理ソフトウエアを切り替えながらでないと一連の作業が行えなかったり,複数のシステム管理者が連携しないと作業できなかったりするほか,操作すべき製品を取り違えやすいなど,ミスを犯さずに手順書通りに作業するのが難しい。

 一方,ポリシーベース自動運用管理を採用している環境では,システム管理者はモデルに基づいて作業内容を記述できるので,業務システム全体として整合性を保つような操作を行うポリシールールを記述しやすく,またいったんポリシールールとして記述しておけば,一連の操作は確実に実行されるというメリットがある。

ポリシーベース自動運用管理が高度化する

 これまで見てきたように,統合システム運用管理ミドルウエアによるポリシーベース自動運用管理は,オープンシステムによる業務システムの運用管理を大幅に効率アップすると期待されるので,今後も普及していくことになるだろう。それに応じて,障害対策のやり方も変わっていく。

 これまでは,運用設計時に手順書を整備して,業務システム稼働中に手順書に沿って対策作業を行っていた。これからは,運用設計時にポリシールールを記述し,業務システム稼働中はシステム管理者がポリシールールの実行状況を確認する,という運用管理に変わっていく。この変化により,システム管理者はより高度なノウハウを必要とする運用管理作業に専念できるようになるだろう。

 ただし,ポリシーベース自動運用管理はまだ発展途上であり,特にポリシールールをシステム管理者に記述させる負担をいかに減らせるかが課題である。統合システム運用管理ミドルウエアの分野では,今後,次のような高度化が検討されている。これらが実用化されれば,一層の運用管理作業の効率化が期待される。

・異なる業務システム間でのポリシールールの再利用
 ある業務システムの運用設計時に,別の業務システムで実績のあるポリシールールを微調整する程度で使えるようにする。これにより,システム管理者が記述すべきポリシールールの分量を大幅に削減できる。

・自動サービスレベル管理
 現状,システム管理者が記述するポリシールールは,前述したように「こういう現象が発生した場合には,次に示す手順で操作を実行する」という形式なのに対し,自動サービスレベル管理では,システム管理者は例えば「この業務システムの可用性は99.999%以上」と,その業務システムのビジネス要件(サービスレベル目標)をポリシールールとして入力するだけで,後は統合運用管理ミドルウエアが業務システムの監視と運用管理作業を自動実行する。システム管理者は,ビジネス要件を入力するだけで,運用管理作業を自動化することができるようになる。

 いずれの機能も,一般に業務システムごとに使われている製品や処理内容が異なるため,実現は容易ではなく,現状は特定の業務システムにおいて限定的に実用化されているだけである。

 しかし,徐々にではあるが,ポリシーベース自動運用管理は高度化に向かっている。最近の動向で特に大きく寄与している要因は3点ある。

 一つ目は,サービス指向アーキテクチャ(SOA: Service Oriented Architecture)やWeb3階層アーキテクチャなどが普及してきたことで,業務システムの構成や運用管理方法がパターン化されてきたこと。二つ目は,サーバー仮想化技術などの登場により,ハードウエアやソフトウエア製品の構成変更が容易かつ迅速になったこと。三つ目は,標準化団体などの活動により,モデルの記述形式や,通信によりハードウエアやソフトウエア製品を呼び出して作業を実行する方式が,製品ベンダーにかかわらず標準化されつつある点である。

 ポリシーベース自動運用管理の高度化には,各ベンダーとも力を入れて取り組んでいるので,今後の動向に注目してほしい。