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前回説明したように,内部統制システム整備プロジェクト「MARICO」の第1フェーズでは,3つのレベルの「文書化」に取り組んだ。しかし,内部統制の整備は,文書化すれば終わり,というものではない。最終回となる本稿では,成功のカギとなる現場への啓蒙活動と,第2フェーズで実施した「有効性の評価」について解説する。

丸紅 リスクマネジメント部長 辻村 正孝

 内部統制のプロジェクトを推進するうえで,教育や啓蒙活動は,やり過ぎということはありません。当社でも現在,様々な機会をとらえて,内部統制の重要性を正しく理解してもらうための啓蒙活動を継続的に行っています(図1)。

図1 内部統制システム整備プロジェクトの教育・啓蒙活動
図1 内部統制システム整備プロジェクトの教育・啓蒙活動
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 もちろん,研修にも内部統制を組み入れました。新入社員,中堅社員,新任課長,新任部長など,どのレベルの社員を対象とする研修にも,内部統制に関するプログラムを必ず設けるようにしています。

 内部統制システム整備プロジェクトをスタートした2004年度には,国内の支店と海外の主要現地法人をすべて訪れ,プロジェクトの趣旨や内部統制の仕組みについて説明して回りました。

 例えば,オーストラリアの現地法人の場合,趣旨を説明するだけでなく,現地スタッフと一緒に現場での文書化の作業を手伝い,一部の文書を作ってきました。趣旨の説明はもちろん英語ですし,文書化にいたっては,英語でヒアリングしながら文書を作っていかなければならず,大変な作業となりました。

 インドネシアでの啓蒙活動についてもご紹介しましょう。当社はインドネシアで大きな工業団地を開発し,分譲しています。その事業を手がける現地法人への啓蒙活動を目的として,約1週間の予定で部下を派遣することになりました。

 ご存知かもしれませんが,インドネシアではビジネスにおいて,インドネシア語と英語が半々の割合で使われています。しかし,役所に提出する書類は100%インドネシア語ですし,決算書類もほとんどがインドネシア語で作られています。そのため,派遣した部下は,おそらく途中で「無理だから出張期間を延長してくれ」と言ってくるだろうと思っていました。

 ところがその部下は,予定通りの日程で,涼しい顔で戻ってきました。うまくいった理由を尋ねたところ,現地法人が工業団地の開発に当たって,品質管理に関する国際標準であるISO9001を取得していたため,スムーズに事が運んだ,ということでした。ISO9001を取得する際に,かなりの業務手続きに関して英語で記述した文書を作成していたので,これを参考にするとともに,財務報告にかかわる部分を加えることで,効率的に文書化を進めることができた,というのです。

 ただ,このケースは幸運だったかもしれません。というのも,内部統制の考え方が浸透している欧米と違い,東南アジアや中国では,内部統制の趣旨を一から理解してもらい,実際に手を動かしてもらうまでに大変な労力を伴うことがあるからです。“職務分離”が確立していないことも多く,「一から十まで,すべて私がやっている」というスタッフに対して,「この業務とこの業務は分離してコントロールしなければならない」といったことを理解してもらうのは,本当に大変です。

 このようなことを回避するためにも,内部統制の取り組みを海外に展開する場合は,必ず主管者や責任者の立ち会いのもとで趣旨の説明を行うことが重要です。そして,その主管者や責任者が真剣に話を聞き,理解しようとしている姿を,実際に作業を行う現場のスタッフに見てもらうのです。これが,啓蒙の実効性を高めるうえで一番良い方法だと思います。

 また文書化については,インドネシアのケースのように,既存の文書で活用できるものがあるかどうかを検討することが重要です。やみくもに文書化をスタートさせるのは効率が良くありません。

「設計」と「運用」の有効性を評価する

 次に,内部統制システム整備プロジェクト「MARICO」の第2フェーズで実施した「有効性の評価」について説明したいと思います。有効性の評価とは,第三者の目で評価を行うことです。内部統制は,文書化すれば終わり,ではありません。この有効性評価が非常に大切なのです。

 有効性評価には2つの段階があります(図2)。1つは,設計したコントロール(リスクを排除・低減するための手法や手順)に問題がないか,コントロールが十分かどうか,といった「設計の有効性評価」です。もう1つは,各現場で設計通りに実行されているかどうかを評価する「運用の有効性評価」です。

図2 第三者の目で評価(監査)を行う「有効性評価」
図2 第三者の目で評価(監査)を行う「有効性評価」
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 これらの有効性評価は,2005年8月に開始しました。評価を開始するのにあたって,プロジェクト推進のためのタスクフォースの中に,「内部統制システム監査チーム」を新たに設置しました。メンバーは11人で,そのうち4人はIT全般統制に対応するメンバーでした。