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佃 均(つくだ ひとし)
ジャーナリスト/IT記者会代表

 発表した決算の記載事項を訂正する株式公開企業が後を絶たない。金融商品取引法(日本版SOX法)が施行され、ITを活用した内部統制ないし、内部統制のためのシステム構築に関心が高まっているが、課題はそれだけにとどまらないようだ。

 ある調査によると、東京証券取引所に上場している2354社のうち、決算発表後に記載内容を訂正したのは659社(28.0%)。2046件の訂正のうち「数字の訂正」が1649件(80.6%)と、2位の「文字の訂正」(335件、16.4%)を大きく引き離している。

 金融庁の自主的点検の指示に基づいて提出された有価証券報告書に関する日本公認会計士協会リサーチ・センターの独自調査でも、開示企業4543社のうち652社(14.4%)が内容を訂正しており、その総数は1330件に上る。売上高や営業利益、株主などの誤記は、「単純な記載ミスと推測される」(日本公認会計士協会)とはいえ、それが開示情報全体の信頼性を損ねることもある。

 金融商品取引法の目的は、企業活動のすべてを検証可能な形で記録することだけではない。企業全体として、市場に対する透明性を確保・維持する仕組みを構築することが、結果として企業の競争力を強化するという考えに基づいて、「IT化」を明記している。そこで経済産業省はIT化促進策として「IT経営」を前面に押し出し、企業はトータルシステムとしてERPパッケージ(統合業務パッケージ)を導入することになるのだが、問題は会計システムのあり方だけではないことに気がつく。

 ERPであるか否かにかかわらず、企業は個々に会計システムを構築し、規模や業態、業務に合わせて個別の会計基準を採用している。連結決算では個々の会計システムのすべてのデータに整合性を持たせる必要がある。また親会社は連結対象子会社の決算進捗に歩調を合わせなければならない。1社でも遅滞があれば、情報開示が遅れてしまう。その調整が一苦労なのだ。

 また、多くの企業は子会社から上がってくる個別決算のデータを表計算で集計し、電卓で検算していると聞く。電卓をたたいて連結財務諸表を作成したのち、ワープロと表計算ソフトを駆使して決算短信、有価証券報告書、商法計算書類を作成する。それぞれ独立したファイルとして作成されるため、整合を確認するために校正を繰り返す。売上高に修正が入るだけで、営業利益率、1株当たり利益率などはもちろん、全体で500カ所以上に波及する。そのすべてを目検で確認し、監査人によるリーガルチェックに入る。それからやっと印刷という運びだが、担当者は情報開示の締め切りに追いまくられる。IT業界の提唱する手法は、前時代的な実態とかい離しているのではあるまいか。

 ある東証一部上場企業のIR担当者は、「決算期を迎えると、IR部門や経理部門はねじり鉢巻、徹夜の連続ということも珍しくない」と苦笑する。「これから四半期決算になるのかと考えると、気が重くなる」と本音を漏らす。会計システムと決算書類作成システムを連携させてはじめて真の内部統制が実現する。内部統制のシステム化は始まったばかり。次にやるべきことははっきりしている。