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 この春、博報堂系インターネットメディアレップ事業者のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)と電通の大手2社が相次いでネットの音声広告配信サービスをリリースした。「音声広告」とは聞き慣れない言葉だが、要は、民放の地上波ラジオなどで聞く音声コマーシャルのネット版と思えば良い。

 意外だった。ネットの広告というと、サイトやソーシャルメディアなどに表示されるテキスト、画像、動画が一般的であり、普段から当たり前のように接している。そのような中で、マルチメディアな情報を扱うことのできるネット広告において「音声」に特化した部分が欠落していたことに改めて気付かされた。

 と同時に、日本を代表する広告会社2社がほぼ同じタイミングで音声広告配信サービスを立ち上げたわけで、「なぜ、今なの?」「ビッグビジネスの予兆なの?」という疑問が湧き上がり俄然興味が湧いてきた。

聴覚コンテンツ大ブレークの予兆か?

 ネットには、テキスト、動画、画像など「視覚」に訴えるコンテンツが溢れている。その一方で、ラジオの様に「聴覚」だけに訴えるコンテンツがビッグビジネスになった話は聞かない。強いて言えば「音楽」が聴覚コンテンツの代表例で、市場は大きい。ただ「広告」が成り立つためには、広告を聞いてもらう代わりに、コンテンツを無料で提供する、広告モデルの存在が大前提になる。

写真1●筆者の場合、運転をしながら、料理をしながら、そして犬を散歩させながら──と1日のうちに聴覚でなければコンテンツに接触できない時間帯がけっこうある
写真1●筆者の場合、運転をしながら、料理をしながら、そして犬を散歩させながら──と1日のうちに聴覚でなければコンテンツに接触できない時間帯がけっこうある
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 日本の音楽業界は「音楽をただで聴かせるなどもってのほか」と、広告モデルと頑なに距離を置いてきた。曲間の音声広告を聞くことで音楽を無料で楽しめるSpotifyがなかなか日本に上陸できないのはそのためだ。であるからこそ、「コンテンツは無料」が趨勢(すうせい)を極めるネットにおいて、着うたやiTunes Storeなど、課金モデルの牙城を堅持できたとも言える。

 一方、音楽以外の聴覚コンテンツに目を向けると、朗読、教材、対談、講演などが思い浮かぶ(写真1)。実際、有料課金でそれらのコンテンツを提供するプラットフォームも存在するが、その存在感は決して大きくはない。メジャーなオーラを放っているのは、アマゾンが運営するAudibleくらいしか思い浮かばない。ちなみに、ポッドキャストも、聴覚コンテンツの中では大きな存在感を示しているが、ダウンロード型であるという理由で音声広告配信とは相性が良くない(詳細は後述)。

 今回、音声広告配信の環境が整ったことで、聴覚コンテンツのジャンルが大きく伸びる可能性がある。ただ、語学にしても、朗読にしても、映像ほどではないにせよ、コンテンツ制作には相応のコストが発生する。広告モデルとして運営できるのかどうかは不透明だ。少なくとも、テキストや静止画ベースのコンテンツと同じ方法論でのビジネスには無理がある。

 卵と鶏の話ではないが、広告モデルが成り立たないから聴覚コンテンツが発展しなかったのか、音声広告配信の仕組みがなかったから聴覚コンテンツが発展しなかったのか分からない。だが、こうやって広告モデルのコンテンツサービスを構築できる環境が整った今、チャレンジャーが登場するのは時間の問題であろう。