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メッセンジャーアプリをプラットフォーム化したWeChat

 現在のチャットボットブームの背景には、二つの成功の存在がある。その一つは、中国のメッセンジャーアプリ「微信(WeChat)」だ。

 映画のチケット購入、病院の予約、タクシーの配車まで、WeChat内部で済ませられる。決済はWeChat Paymentで完了する。

 ユーザーはWeChatを開けば、もう他のスマホアプリを開く必要はない。中国のサービス事業者にとってWeChatは、自社サービスを提供するプラットフォーム、あるいはOSのような存在になっている。

 こうしたWeChat内サービスの一部は、WeChatのメッセージングUIを使い、チャットボットと会話しながら使える。もっとも現時点では「吹き出しに選択肢を表示し、ユーザーに選んでもらう」といった単純なものだが、将来はより高度な会話をこなせるチャットボットも現れそうだ。

 「メッセージングアプリが次世代のOSになる」という可能性に、フェイスブック、グーグル、マイクロソフトといった米大手IT企業がアクションを起こさないはずはない。

 この可能性に最も賭けているのは、「Messenger」「WhatsApp」という2大メッセンジャーアプリを抱えるフェイスブックだろう。マーク・ザッガーバークCEOは、頻繁に中国を訪れ、中国語を理解し、現地のITサービスに触れている。WeChatの成功についても、誰よりも熱心にウォッチしているはずだ。

 「フェイスブックは、自社のメッセンジャーアプリ上で使えるチャットボット技術の開発へ、着々とAI研究者の獲得と会話データの収集を進めている」と、国内の自然言語処理研究者は語る。

 フェイスブックは2015年3月の開発者会議で、数行の文章を読み込み、文章に関する質問に答えるチャットボットの基礎技術「Memory Networks」のデモを公開した。デモでは「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」のあらすじ数行を読み込んだ上で、あらすじに関連した質問に答えることができた。

 この技術を開発したのは、2013年まで米グーグルに在籍していた自然言語処理の研究者である。論文投稿サイト「arXiv」の履歴によれば、2014年までに欧州の共同研究者ともども、Facebook AI Researchに移籍していることが分かる。

 「研究者の引き抜き、Memory Networksの研究から、パーソナルアシスタント『M』の運用、Mの背後で教師役をしている人間による正解データの収集まで、チャットボット技術の獲得へ向けた並々ならぬ熱意を感じる」と、前述の研究者は語る。