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 ステークホルダーの合意形成が難しくなっている。プロジェクトへの「無関心」「抵抗感」がまん延しているからだ。そんな状況を打破する鍵が「ステークホルダーマネジメント」である。

 「あの一言が失敗の引き金になるとは」。こう話すのは小売業のシステム部門に所属する高野重徳氏(仮名)だ。

 高野氏は2012年、情報系システム刷新プロジェクトのマネジャー(PM)を任された。そのシステムは社内の大半の部門が利用するもの。そこで六つの主要な利用部門から課長クラスのキーパーソンを集め、要件定義の検討会を開催した。

 初回の検討会で高野氏は、検討会に駆り出された参加者を気遣いこう言った。「本業が忙しいでしょう。検討会には、可能な範囲でなるべく参加していただければと思います」。

 この言葉を、参加者は「忙しければ無理に出席しなくていい」と受け取った。2回目の検討会でさっそく1人が欠席。その後は出席者の人数が欠席者を上回ることはほとんどなかった。

 もともと大半の利用部門で、従来の情報系システムに対する問題意識は希薄だった。そこに高野氏の不用意な発言が追い打ちをかけた。ただでさえプロジェクトへの参画意識の薄い参加者たちは、さらに非協力的になった。

 高野氏は仕方なく、出席した参加者だけで無理やり要件を決めていった。予算の都合上、稼働時期を遅らせることができない案件だった。

 システムの稼働にこぎつけると、検討会の参加者だったキーパーソンから「こんな画面になるとは思っていなかった」「従来システムのあの機能はなぜなくなったのか」といった不満が噴出した。結局、大幅な改修を行う羽目になり、高野氏は責任を問われた。高野氏は「最初から参加者にもっと協力を取り付けるべきだった」と悔やむ。

難易度高まるステークホルダー管理

 この事例は「ステークホルダーマネジメント」の失敗といえる。ここでいうステークホルダーとは、プロジェクトの関係者全般を意味するが、実際にはその中でも重要な人を指す。プロジェクトの最終意思決定者であるプロジェクトオーナー、経営層、利用部門の代表者、システム部門や開発会社の要員などが該当する。もちろんPMもステークホルダーの一人だ。

 その中には、プロジェクトへの参画意識が低かったり、プロジェクトそのものを面白く思っていない人もいる。そんなステークホルダーさえもプロジェクトの協力者に変え、合意を固める。そのためのPMの取り組みが、ステークホルダーマネジメントである。