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 世界230カ国・地域で無料通話・無料メールアプリケーションのLINEは利用されている。誕生のきっかけは2011年3月の東日本大震災だ。インターネット上のコミュニケーションといえば、それまでは匿名が中心。震災直後の安否を確認するため、親しい人や身近な人とすぐにコンタクトできるクローズドなコミュニケーションの必要性を感じ、LINEの開発に着手した。1カ月半で開発を終え、サービスを始めたのは6月。3年余りたった今年7月初めには利用者が世界で4億7000万人に達した。

人間関係をカテゴライズし小規模グループがニーズに

LINE 代表取締役社長 森川 亮 氏
LINE 代表取締役社長 森川 亮 氏

 なぜLINEは受け入れられたのか。その背景にはコミュニケーションのあり方の変化があったと私は考える。スマートフォンが登場してFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアの利用が拡大した。FacebookやTwitterに共通するのは大勢の人とコミュニケーションを図るためのオープンな環境であることだ。その一方で、人間関係をカテゴライズし、小規模なグループを設計できるソーシャルメディアがあっても不思議ではない。LINEはそんなニーズをとらえたと思う。

 テキストや画像によるコミュニケーションだけではなく、スタンプや無料通話などによって感情も伝えられるリッチなコミュニケーションに進化したこともLINEの人気に拍車をかけた。また、コミュニケーションを中心にゲームやeコマースなど様々なコンテンツ、サービスを包含したプラットフォームを形成したことも人気を呼んだと思う。このプラットフォームを活かす形で独自のビジネスモデルを築き上げることができた。

 有料スタンプによるアプリ内でのコンテンツ課金はその1つだ。LINEのスタンプにはデフォルトで入っている無料のもの以外に、有料スタンプとスポンサードスタンプもある。スタンプに使われているキャラクターは250を超え、国によっては現地オリジナルのキャラクターを使ったスタンプもある。

 また、コミュニケーションの価値を高めるためのアプリ、ゲームにおける課金、広告収入なども重要な収入源である。とりわけ広告については、企業のターゲッティングメールによるクーポン配信の支援をはじめ、企業が販売する商品と連動したオリジナルスタンプの提供などビジネスを広げている。

事業計画は立てない、達成の目的化を防止

 こうしたアイデアを次々に生み出し、事業化できたのは当社独自の組織文化によるところが大きい。世の中は水の流れのように速く変化する。インターネットの世界も同じだ。あらかじめ流れを想定するのではなく、その変化に追随していくことが大切だ。変化に対応できなければ生き残ることはできない。流れとともに思考もサービスも変わっていく組織になるため、権限を委譲してスピード感を持った経営を心掛けている。とりわけ次の3つのポイントを強く意識しながら経営のカジ取りをしている。

 1つ目は「事業計画を立てない」。LINEには事業計画が存在しない。会計上の計画・予算は存在するが、あくまで資金繰りなど財務的なリスク管理のためだけに使う。この計画を事業部門と情報共有したり、予算管理責任を持たせたりはしない。

 売上高などの計画を立てると、それを達成することが目的化してしまう。計画を達成するために中途半端なサービスを提供してしまい、ユーザーの不利益につながりかねない。事業部門はあくまで価値を提供することに専念すべきだ。

 2つ目は「海外進出時にはオフィスを構えない」。LINEはアジアや欧州、南米などでも事業を展開する。言語対応をはじめ、現地で人気のキャラクターを使ったスタンプの開発、キャラクターの現地に合ったものへの修正、現地キャリア(携帯電話事業者)や端末メーカーとの協業などに取り組んでいる。

 進出先の現地で発生する業務は少なくないが、進出当初は駐在員にホテル住まいをしてもらい、しかも2~3カ国を担当してもらっている。そうすることで、成長の可能性があって力を入れるべき国と、そうではない国が見えてくる。可能性に乏しい国からは早々に撤退し、力を入れるべき国にはオフィスを設けて本格的に展開する。

業務でもLINEを活用し、リアルタイムの意思疎通

 3つ目は「サービスの開発はデザインを軸に進める」。詳細な市場調査やシステム仕様書から着手するのでは時間がかかる。そこで、デザイナーを中心にサービスのイメージをつくり、複雑な機能をつくり込むのではなく、シンプルなサービスを開発してすぐに公開する。ユーザーの反応を見ながら、その後で機能を改善したり追加したりする。

 そして、私たちのスピードの速さの秘訣の1つにLINEがある。LINE社内では、業務のためのコミュニケーションのほとんどでLINEを使う。電子メールでは、どうしてもメールがたまってしまうからだ。これでは処理に時間を要し、業務のスピードが落ちる。LINEだとリアルタイムなコミュニケーションを図れ、投げ掛けたメッセージが既読かどうかも分かる。自動翻訳機能などもあるので、海外の社員とのコミュニケーションも円滑に進む。

 サービスを開始してから3年目を迎えた今年6月、LINEとLINEファミリーアプリの累計ダウンロード数は世界で10億件を突破した。日本発のLINEが、世界中のスマートフォンのコミュニケーションプラットフォームとして、様々なサービスをつなぐゲートウエイになることを目指し、今後も価値を提供したい。