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 コンピュータを企業が本格的に業務に利用し始めたのは1970年代のことだ。以来、ITの利用は飛躍的に進化した。90年代にはインターネットが登場し、コミュニケーションを変革した。そして、今日ではありとあらゆるモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)が加速し、モノから発信されるデータが爆発的に増えている。

 IoTとビッグデータによって、産業革命に匹敵する変化がこれから起こると確信している。のちにITの歴史を振り返るとき、今年は「ビッグデータによる業務変革の元年」と位置付けられるだろう。

 ビッグデータ活用の最大の利点は、予兆の検知にある。センサーがリアルタイムでデータを送信するシステムはこれまでもあったが、異常が発生した際にアラームを鳴らすだけで、ほとんどのデータは蓄積されなかった。しかし、すべてのデータを蓄積し、高速に分析するシステムが構築でき、将来に起こることの予測は不可能ではなくなった。膨大なデータの分析やセンシングデータの活用、機械学習によって、今までにないことが実現可能になり始めている。

可能な限りデータを収集、売り上げの相関関係を発見

富士通 執行役員常務 CTO & CIO 川妻 庸男 氏
富士通 執行役員常務 CTO & CIO 川妻 庸男 氏

 一例を挙げれば、当社のお客様である食品関係の大企業は以前なら商品の売り上げに影響を及ぼす要因を仮説を立てて把握していたが、最近、その要因が分からなくなってきたという。当社はそれを解決するため、お客様の商品データだけでなく、その商品とは無関係の野菜、果物、精肉、鮮魚などの価格や流通量のデータ、各地の気象データなど集められるだけのデータを収集した。その数は計1300種類に及んだ。

 すべてのデータの変化を時系列に1年間分並べ、データ間での相関関係を調べてみると、思いもよらぬ関係が見つかった。ある時期はバナナの取引量と相関関係が高く、別の時期には東北地方の最低気温と相関関係があった。因果関係は分からないが、売り上げと連動する因子を見つけ出すことができた。

 ITの活用が最も難しく思われる農業でもビッグデータの活用は進んでいる。例えば、富士通の食・農クラウド、Akisaiを活用する農業生産法人では、果樹園に設置した様々なセンサーから収集したデータを分析し、糖度の高いブランドみかんの収穫量を2年間で2倍に伸ばした。

食・農エコシステムの創造
食・農エコシステムの創造
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 Akisai上では、農家、農業機械メーカー、外食業者、小売業者、物流業者、自治体、食品加工業者、リース会社、監査法人、商社など、様々な企業・団体が議論し合っている。今後、様々な分野のデータがつながることで、農作物の品質や収穫量の向上に加え、トレーサビリティーの実現、需給バランスの調整などが可能になる。

 Akisaiの事例が示すように、ビッグデータの本格活用が始まると、サプライチェーンに関係するすべての企業・団体がデータによってこれまでにない密接なつながりを持つ。データ活用を目的とした多様な連携は、今後、農業に限らず様々なところで増える。ビッグデータの活用を中軸に据えて共生するエコシステムを形成するようになるだろう。

プロ棋士に勝つコンピュータ、機械学習によって性能向上

 最近、話題を呼んだコンピュータ将棋もビッグデータ活用の一例だ。プロ棋士に勝つようになった背景には、機械学習によって将棋プログラムのつくり方が以前と変わったことがある。

 以前、プロ棋士などが自身の指し方を将棋プログラムに反映していたときには、将棋プログラムはアマチュアの有段者レベルだったが、プロ棋士同士の対局で実際に指した手順を示す棋譜のデータをもとに機械学習によってプログラムを作成できるようになった。将棋プログラムのBonanzaでは、6万局の棋譜をもとに最終的にプロが指した棋譜になるようなアルゴリズムをコンピュータに生成させ、プロ棋士に勝つレベルに達した。

 ITの進化により、人間の発想では得られないパターンが見えるようになり、データ量が膨大で人手で対応できなかったものでも処理できる。しかし、それをどう役立てるかは人間の創造力による。ビッグデータの活用で相関関係はとらえられても、因果関係は分からない。なぜこのような結果になったのか考えるのは人間だ。ここにコンピュータと人間のすみ分けができる。

 富士通は、人を起点としたイノベーションによって、人々が安心して快適・便利に暮らせる社会「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」の実現を目指す。IoTの進展とビッグデータの活用によって、人がより豊かに暮らし、経済が活性化され、持続可能なインテリジェントな社会を築けると考えている。