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 この連載では、先が見えない「暗闇プロジェクト」を主導するマネジャーが持つべき心得や運営のヒントを事例とともに示している。前回に続いて、暗闇プロジェクトで発生する問題に関わるセオリーを紹介しよう。

セオリー1
問題の収束を阻むのは「主導権争い」

 J部長は悩んでいる。新規プロジェクトのリーダー候補としてA氏とB氏の二人がいて、どちらも甲乙つけがたいのだ。

 年次や職位が異なるのであれば、高いほうをリーダーにすればうまく収まる。ところが二人は新卒の同期入社で、現在の職位も同じ。どちらかを別のプロジェクトに割り当てれば済む話だが、あいにくそういうわけにはいかない。

 プロジェクトの規模や必要なスキルを考えると、A氏やB氏のようなレベルの人材が少なくとも二人は必要だ。その条件に該当する別の人材は、あいにく他のプロジェクトに参加している。A氏、B氏ともに今回のプロジェクトに参加してもらう必要がある。

 A氏とB氏の仲がいいのであれば、まだ何とかなる。困ったことに、二人はあまり仲がよくないとの噂である。二人とも自己主張が強いタイブで、はたから見ても性格が合わないという印象を受ける。どちらかを上にして、どちらかが下になれば、何が起こるかは火を見るより明らかだ。

一人をプロジェクトマネジャー、もう一人をPMOに

 J部長は苦肉の策を取った。A氏をプロジェクトマネジャーに、B氏をPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)に据えたのである。プロジェクトのマネジメントはA氏が担う。B氏はPMOとして、プロジェクトを成功させるための様々な助言や支援、ときには管理を行う。

 この体制は指示命令系統が分かりにくい。プロジェクトマネジャーとPMOのどちらが上なのか。マネジャーはPMOに従う必要があるのか。PMOの助言や管理に従う必要があるのか──。

 こうした曖昧な体制こそ、J部長が狙ったものだ。どちらかを上にして指示命令系統を明確にすると、すぐケンカになるのは目に見えている。

 A氏とB氏は、この体制を取った意味をうすうす勘づいており、J部長に「指示命令系統を明確にしてほしい」とは特に要求しなかった。両者とも、プロジェクトの成功が自分のためになるのは百も承知している。互いに自分の仕事を頑張ってプロジェクトが成功すれば、両者とも同じような評価がつくことも予想できた。