この決定にIT部門や業務部門の担当者は猛反発した。削られた機能は「これは必要なのでぜひ入れてほしい」と現場が強く望んだものだったからだ。「経営層の決定なのだから受け入れて、運用でカバーしてくれないか」とマネジャーが言っても、聞き入れようとせず、現場は混乱した。
程なく、この話がD社役員の耳に入る。混乱の原因が売り物の機能にあると知ると、役員は激怒し、「そもそもの前提条件をひっくり返すつもりか」とマネジャーを一喝した。
事を無難に収めようと考えていたマネジャーは、新たな解を模索せざるを得なくなった。予算内で、最大限のメリットが見込める機能を選択するにはどうすればいいか。だが最も有効な解決策は、売り物の機能を排除することだ──。
「またベンダーにぼったくられるのではないか」
別のユーザー企業であるE社の話である。E社は部門システムの統合を計画している。各部門が独自に構築したシステムで、請け負ったベンダーはそれぞれ異なる。
E社は以前もシステム統合を試みたことがあったが、プロジェクトは頓挫した。統合を担当するベンダーが部門システムの開発ベンダーに対して、データ連携の仕様開示やカスタマイズを要求したところ、法外な費用を要求してきたからだ。
統合を担当するベンダーと、部門システムの開発ベンダーとは競合関係にある。要は、統合の案件を取れなかったベンダーが相手に嫌がらせをしたということだ。
E社が今回相談したのは、ITコンサルティング会社のF社である。以前のシステム統合について話を聞いていたF社は「難しいプロジェクトになる」と考え、慎重に臨んだ。
システムを統合するとなると、各部門システムのベンダーに協力を仰がざるを得ない。F社はベンダーの協力を得るための案を複数作成し、E社に示した。しかし、E社はどの案にも難色を示す。「またベンダーにぼったくられるのではないか」との思いが頭から離れないないのだ。