通常のプロジェクトでアクションプランを上司に承認してもらう必要がある場合は、ロジカルに計画を作成しないと「根拠を示せ」と突き返されてしまうだろう。しかし、暗闇プロジェクトにはこのことが当てはまらない。むしろ、アクションプランにロジックを求めるようだと、プロジェクトは失敗する可能性が高くなる(図1)。
Sマネジャーがつまずいたのは、この点を理解していなかったからだ。X部長とY部長がなぜ仲が悪いのかという真の原因を探ろうとせず、ロジカルなプランで状況を打開できると考えたが、うまくいかなかった。
X部長とY部長は仲が悪いといえども大人であり、ビジネスに関しては冷静に判断するに違いない。Sマネジャーがこう考えるのは当然といえる。
しかし、感情の力は、時に合理的で論理的な判断を上回る。論理的な問題解決法に慣れたSマネジャーは、こうした感情の問題の大きさを理解できなかった。分かったところで、どのようにアプローチすればいいのかもピンと来なかったに違いない。
著名な書籍である『イノベーションのジレンマ』には、「論理的で正しい経営判断が、企業がリーダーシップを失う理由にもなる」「新しい市場につながる破壊的技術を扱う際には、市場調査と事業計画が役に立った実績はほとんどない。新しい市場がどの程度の規模になるかについて専門家の予測は必ず外れる」という記述がある。
暗闇プロジェクトも同じである。計算できないのが「暗闇」なのだから、ロジカルなプランは効果が薄いと捉える必要がある。部下がそうしたプランを出してきたら、ただちに却下するくらいの姿勢でちょうどよい。