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 第187回の「その1」では、小池改革の原点には「五輪予算見直し」「豊洲市場への移転再検討」「議会改革」の3つの公約があり、都議選に向けた政治的パワーの盛り上がりとともに一気呵成(かせい)で3つとも達成できたと説明した。今回はその他の改革について見ていこう。

地道な改革基盤づくり

 2016年9月、小池知事は就任後すぐに「都政改革本部」を立ち上げ、局長、副知事を本部員とし、自ら本部長に就いた。本部には庁外の有識者から筆者を統括とする特別顧問と特別参与を起用し、第三者と専門家の視点を入れた都政改革に取り組み始めた。そして程なく3つの改革の視点――すなわち「都民ファースト」「情報公開」「賢い支出(ワイズスペンディング)」――を打ち出した。本部には事務局員として20人程度の職員が集められ、特別顧問らとともに知事サイドの視点から各局の改革を主導する役割が与えられた。

 本部は当初、先述の「五輪予算見直し」と「豊洲市場への移転再検討」の2つの作業で忙殺された。だが同時に全庁的な「情報公開」や「内部統制」の総点検を行った。また各局に「自律改革」を求めた。

 ここでいう「情報公開」とは、(1)情報公開制度の見直し、(2)広報の見直し、(3)広聴の見直し、(4)各種会議体の情報公開、(5)公益通報制度の拡充だった。また「内部統制」の正式な検討テーマは、(1)契約・入札、(2)事業評価(政策評価)、(3)補助金の使途(透明性)、(4)監理団体の指導・監督、(5)公務員倫理、(6)各局の意思決定プロセス、(7)知事の海外出張・公用車の運用だった。

情報公開へのこだわり

 さて、なぜ改革の手始めが「情報公開」と「内部統制」だったのか。都庁では前任の2知事がいずれも政治とカネの問題で短期で辞めた。また五輪と豊洲の2大事業の無駄遣いや談合等の疑惑の憶測報道がされていた。さらに豊洲市場の地下水問題など、庁内の意思決定の仕方や透明性への疑問があった。

 だから、報じられる過去の不適正事象の実際の真偽はさておき、同種の問題の再発防止は都政の最重要課題だった。「内部統制」については、入札制度の見直しや公益通報制度の見直しを通じていち早く着手し、あわせて「情報公開」の総点検をして、各種審議会などの議事録の公開や開示請求に対する対応方針などを見直した。

現場発の改革を誘発――「上からの削減」からの脱却

 だが、以上の「改革」はいずれも不適切事象の抑止策、つまり後ろ向きの課題への対処である。そこで本部は今後の世の中の動きを先取りし、あるいは現場の職員提案を吸い上げる前向きの改革の仕組みを考え、「自律改革」と命名して全庁で展開している。

 これは文字通り、各局が自ら課題を探し、解決の方法を考え、取り組んでいくものである。具体内容は局によって異なり、新規施策や技術導入もあれば、規制緩和や事業の廃止もあった。これらの途中経過はほぼ毎月に開催する本部会議で局別に発表してもらった。また各局のノウハウを冊子にまとめてマニュアル化し、広く全庁で横展開できるようにした。

(例)東京都の「自律改革事例集

 自律改革はその後も継続中だが、さらに2017年度からは「見える化改革」にも取り組んでいる。これは都庁の主要事業を抽出し、それぞれについて企業の事業分析手法を使って将来の事業環境の変化を洞察しながら課題を分析し、結果を公開し、解決方策を導き出すものである。今まで15の事業について終え、下水事業や発電事業へのコンセッションの導入や、教員支援のための専門組織の設定などの改革案が出てきた。

 「自律改革」は、どちらかといえば現場の職員の日常の気づきから出発する。それに対し「見える化改革」は納税者、利用者を意識し、経営者の視点から将来の事業の在り方を考えるものである(この手法の先例は大阪府市、内容は「検証 大阪維新改革」(ぎょうせい)に詳しい)。従来の行政改革はややもすれば、行革本部が人員や予算の削減を先に決め、それを各部署に割り振るものが多かった。だが、今回はむしろ各局が自ら経営者の視点に立って将来の姿を考える。そのうえで人と予算の投入量についてはメリハリを付けて考えていくという新しい手法をとったのである。