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 アベノミクスの第三の矢である成長戦略には、地方創生と並んでICT活用を前提とした施策が目立つ。2014年までIT総合戦略本部の有識者本部員を務め、全国知事会では情報化推進プロジェクトチームリーダーとしてマイナンバー制度の導入・利活用にも深く関わっている徳島県知事の飯泉嘉門氏に、行政におけるICT活用の重要性や課題について聞いた。

(聞き手は本誌編集長、井出 一仁)

7月に約1カ月かけて、将来の移転を想定した消費者庁の業務試験を県庁舎で実施しました。

飯泉 嘉門氏
飯泉 嘉門氏
(写真:松田 弘)

飯泉 これはまさに、第3次安倍再改造内閣が掲げる「働き方改革」そのものです。

 徳島県は、東京や大阪などのICT企業にサテライトオフィスの設置を働きかけ、すでに40社が神山町、美波町、三好市などの中山間地域に移ってきています。制作や新事業の企画などのクリエーティブな仕事は自然に恵まれた場所の方が適しているという判断からです。

 能率も上がるし、人間らしい生活もできる、まさにワークライフバランスを具現化できます。単に地方の活性化のためだけに霞が関の機関がこちらに来ればいいと言ったわけではありません。

 もうひとつの理由がリスク分散です。東京は直下型地震が危惧されています。関西広域連合が主張する「二眼レフ構造」のようにすべきです。ICT企業はすでに5年も前からやっています。2015年の国勢調査では初めて大阪府の人口が減り、逆に東京圏は51万人も増えました。東京一極集中を是正するなら“今でしょう”。

ただ、現実にはなかなか難しいことも実感しているのでは。

飯泉 全国知事会では、企業の本社機能の地方移転を促す税制を政府に提案し、実現しました。しかし企業はなかなか動きません。国の本気度を見ているからです。霞が関にある政府機関が移転するなら本気だと。

 だからこそ、我々は政府関係者のワークライフバランスの実践と、東京一極集中の是正を訴え、政府機関に地方移転を促しているのです。

3月の神山町での“お試し移転”では、テレビ会議システムの音声が聞き取りにくいなど、ICT活用の面での課題も指摘されました。

(写真:松田 弘)
(写真:松田 弘)

飯泉 神山町のICT企業は、何の不便もなくやっています。問題は霞が関のシステムが最新のICT環境に追い付いていないことなんです。それが実証されてしまったのです。

 7月の実証では消費者庁は専用回線を引きました。これで通信の問題は解消しました。でもICTの活用というなら、VPN(仮想閉域網)やクラウドを使う方法もあるでしょう。

 政府機関は「高度の秘匿性が重要」と言いますが、ICT企業も同じです。一企業と中央省庁ではデータ漏えいのインパクトが確かに違いますが、そうであればICTを活用して秘匿性を高めればいいんです。IT総合戦略本部は「世界最先端IT国家創造宣言」を作り、閣議決定までしました。その中にはテレワークも入っています。国が新たな働き方改革をしようというのなら、やはりまず国の職員が模範になるべきでしょう。

消費者庁の移転は少し様子を見ることになるそうですね。

飯泉 河野・前消費者相が徳島県庁内に「消費者行政新未来創造オフィス」を設けて3年程度をかけて移転について検討する考えを示し、松本・新大臣もそれを引き継ぐと明言されました。その具現化のために、2017年度予算概算要求に7.2億円が計上されました。徳島県は、提案した新次元の消費者行政のために最大限にバックアップしていきます。

 実は政府が掲げる「一億総活躍社会」でも、テレワークは有望なツールになります。例えば女性管理職に多い介護離職の問題を解決できます。テレワークによって管理職に在任し、自宅で親の面倒を見て、出社する必要がある時はヘルパーを頼んだりショートステイを利用したりすればいいわけです。

▼2017年度予算概算要求
8月31日付の消費者庁の概算要求(優先課題推進枠での要望を含む)で、徳島県での消費者行政新未来創造オフィスに関連する経費として7.2億円が計上された。
▼介護離職の問題
ケア付きホームに入っていても要介護状態になると、特に母親は息子や嫁ではなく娘に面倒を見てもらいたいと言いがちで、女性管理職の離職につながりやすい。離職して収入が減ると、有償のオプションサービスも使いにくい。

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