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カリスマ亡き世界的企業の内憂外患

 カリスマ指導者は諸刃の剣だ。その輝きが失われると、たちまち大きな混乱が起きる。始皇帝後の秦しかり、アレキサンダー大王後のマケドニアしかりである。

 そして今、同様の苦しみに直面している世界的企業が、スティーブ・ジョブズ亡き後の米アップルだろう。ティム・クックをトップに据えた同社の内部で何が起きているのか―この問いに、緻密な取材と多面的な分析から答えを出そうとしているのが本書である。

 カリスマ亡き後、混乱を招く一因が権力継承の失敗だ。秦の場合、始皇帝から位を引き継いだ皇帝はまったくの俗物。取り巻きにも恵まれず、国の崩壊は止まらなかった。

 アップルの場合、この点は問題なさそうだ。クックは管理能力に長けており、何よりジョブズが自分の後任として認めた人物だ。さらにジョナサン・アイブなど「アップルらしさ」を体現する人物も社内に残り、クックをサポートしている。

 一方でアップルがいくつもの試練にさらされていることを、本書は冷徹に描き出す。長年サプライヤーとしてアップルを支えてきたフォックスコンとの関係変化。Siriや地図アプリなどでの失敗。サムスンとの過酷な法廷闘争。ジョブズという重しが取れることで生じつつある、経営幹部間のあつれき―アップルが直面する問題が、散発的ではないことを認識できるだろう。