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ビターな経営体験談と助言が満載

 優れたビジネス書には2つの方向性がある。1つの方向性は、聡明な学者がデータに基づいて客観的に考察する「研究論文」。そしてもう1つが、偉大な経営者が自らの体験に基づいて主観的なアドバイスをつづっていく「ストーリー」である。

 本書は間違いなく後者のストーリーだ。しかも語られるのは、ビジネス書で触れられることが少ない「ハード・シングス」、すなわち極めて困難な状況でどう対処したかという経営者の実像である。

 著者のベン・ホロウィッツは、米シリコンバレーに拠点を置く著名なベンチャーキャピタルの創業者だ。彼と経営でタッグを組むマーク・アンドリーセンは、ウェブブラウザ「ネットスケープ」の発明で有名だ。

 彼らは自ら複数のITベンチャーを立ち上げた経験を生かして、ハイテクベンチャーを中心に投資。大きな成功を収めている。

 「そんな人物による1冊なのだから、多少の苦労話はあれど、華々しいサクセスストーリーに違いない」と思うかもしれない。しかし実際に読んでみると、胃が痛くなるような内容のオンパレードだ。

 苦労して会社を軌道に乗せたと思ったら、ビジネス環境の変化で一気にどん底へと突き落とされる。ようやく脱出したら、別の落とし穴が待ち受ける、という具合である。何しろホロウィッツ自身、「CEOでいる間、一度も心の平和を得られなかった」と語っているほどだ。

 ただし本書は、起業家志望の人々に恐怖心を植え付けるだけの本ではない。厳しい状況に立たされたとき、何を考え、どう切り抜けたのか。何を教訓として得て、他人にはどのようなアドバイスができるのか。ホロウィッツは自らの経験に基づいて、率直な意見を詳しく書き連ねている。その内容は他では見聞きできない貴重なものばかりだ。