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政府はほかにやるべきことはある

 丸山氏は、自社が手掛ける深層学習について「コンピュータサイエンスの世界を確実に変えるものだ」と語る。ソフトウエア開発の中心が、従来のプログラミングから、ニューラルネットワークの設計と学習へと移行する、と見込んでいる。

 深層学習の興隆に伴い、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアのアーキテクチャーにも大きな変動が起こっている。「つい最近までは、x86サーバーを並べたクラウドサービスが全盛だった。深層学習では、GPU(グラフィックス処理プロセッサ)インフラが重要になる。我々も、北海道石狩市のデータセンターにあるGPUサーバーインフラを使っている。さらにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成の下、理化学研究所とハードウエア開発のプロジェクトも始めた」(丸山氏)。

 「プログラムからニューラルネット」という変化に伴い、ニューラルネットを学習させた「学習済みモデル」や、学習用のデータセットについて、知的財産権の扱いが世界的に議論になっている。

 プログラムは現在、ソースコードの著作権という形で知財を管理している。一方、学習済みモデルや学習データの知財保護の枠組みは、世界的にもまだ決まっていない。知財の保護が十分でなければAI開発のインセンティブが働かない。一方で、締め付けすぎるとAI開発の自由度を狭め、先行する海外メーカーにも有利になる。

 日本では、学習済みモデルの保護について、内閣府や経済産業省などで議論が進んでいる。学習用データの扱いについては、日本の著作権法は第47条の7で、コンピュータなどを用いて情報解析を行う場合は必要な範囲で著作物を複製・翻案できる、としている。「この条項からすれば、AIにデータを読み込ませる工程自体に著作権侵害がないのは明らか。AI開発の自由度を高めるもので、世界に誇っていい条項だ」(丸山氏)。

 こうした日本の立場を世界に発信し、議論を深めることこそ、政府の役割ではないか。丸山氏はこのように主張する。

世界でAI開発指針を巡り議論

 現在、日本を含めて世界でAIの開発指針を巡る議論が起こっている。例えば米マイクロソフトは、公平性、説明責任、透明性、倫理をベースにした技術者向けガイドラインを社内で策定しているほか、AIが人間や社会に与える影響について企業同士で議論する業界団体「Partnership on AI」の活動も主導する。

 国民に広がる脅威論を背景に、政府や国際機関による指針が策定されるのが先か、あるいは研究者、技術者が世間の不安を真摯に受け止め、業界横断で指針を作るのが先か。いずれにせよ、個人や企業の枠を超え、AIの開発指針について議論を尽くす必要があるのは間違いなさそうだ。

■変更履歴
当初記事3ページめで「特許法」とあったのは「著作権法」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/4/10 10:15]