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 2016年7月18日に突如発表された、ソフトバンクグループによる英アーム(ARM)の買収。ARMの手掛けるプロセッサは、モバイル機器や組み込み機器で使われているのは知っていても、そのラインアップや事業の中での位置付けまでは知らない、という人も多いだろう。ARMの公開資料から、ARMの事業とその内訳について解説する。

 冒頭で英アームと書いたが、正確にはアームホールディングス(ARM Holdings)だ。アームホールディングスは純粋な持ち株会社で、子会社にARM Ltd.を抱えている。一般にARMという場合はこの子会社を指す。両者が分離したのは1998年の株式公開のタイミングで、それまでは一体であった。

 ARMの創業は1990年。イギリスのケンブリッジに本社がある。元々はエイコーンコンピューターズ(Acorn Computers)というイギリスのパソコンメーカーが自社の新製品向けのプロセッサチップを開発したのがきっかけである。ところが米アップルコンピュータ(Apple Computer、現Apple)が「Newton」という自社のPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)向けにこのプロセッサを利用したいと考えた。

 結果、Acorn Computers、Apple、実際にAppple向けの製品を製造する米VLSIテクノロジーの3社が共同出資する形でプロセッサの設計部門を独立させたのがARMとなる。ちなみにARMは元々「Acorn RISC Machines」の略であったが、後に「Advanced RISC Machines」の略に改められている。

 ARMはその後も省電力デバイス向けのチップの設計に携わっていたが、フィンランドの携帯電話メーカーであるノキアが、その携帯電話向けOSであるSymbianでARMのプロセッサをサポートした(ARM以外をサポートしなかった)ことで、携帯電話向けに急速にシェアを高めていった。

 2000年代に入ると、高い演算性能優先させたアプリケーションプロセッサ「Cortex-A」、システム制御向けのリアルタイムコントローラー「Cortex-R」、組み込み制御向けのマイクロコントローラー「Cortex-M」という3種類のアーキテクチャーを提供するようになり、携帯電話以外でも広く利用されるようになった。

ライセンスとロイヤルティーで稼ぐARM

 ARMは、自身ではチップを製造せず、あくまでもチップのための設計図(IP)を販売するモデルを取っている。ARMの顧客は、米AMD、米クアルコム(Qualcomm)、台湾メディアテック(MediaTek)など様々な半導体チップメーカーである(米インテルも一時期はそのリストに名を連ねていた)。こうしたメーカーはARMからIPを購入し、それを組み込んだ製品を販売している。

 この際、まずメーカーはIPのライセンスを受け、さらにそのIPを組み込んだ製品を販売する際にロイヤルティ-をARMに支払う。ARMの収入は、このライセンスフィーとロイヤルティが主要な部分を占める(図1)。

 2016年第1四半期の場合、売り上げは約3億9800ドル(1ドル=106円として約422億円)。そのうちライセンス収入が36%(約157億円)、ロイヤルティーが55%(約229億円)だ。実はこのロイヤルティーが、長期的なARMの繁栄を支えている(図2)。

図1●2016年第1四半期の場合、ライセンス収入が36%、ロイヤルティーが55%。第1四半期全体での売り上げは約4億ドルとなっている。
図1●2016年第1四半期の場合、ライセンス収入が36%、ロイヤルティーが55%。第1四半期全体での売り上げは約4億ドルとなっている。
(出典:ARM Holdings plc Q1 2016 Roadshow Slides)
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図2●最初の数年はARMが自身で開発を持ち出しの形で行うが、他のメーカーが採用するとまずライセンスとロイヤルティーが開発段階(3~4年)で入る。さらにその後数十年にわたってロイヤルティーが入り続ける可能性がある。
図2●最初の数年はARMが自身で開発を持ち出しの形で行うが、他のメーカーが採用するとまずライセンスとロイヤルティーが開発段階(3~4年)で入る。さらにその後数十年にわたってロイヤルティーが入り続ける可能性がある。
(出典:ARM Holdings plc Q1 2016 Roadshow Slides)
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