PR

 札幌高裁はNTT東が採った次の2つの対応を根拠に、同社の対応にPM義務違反はなかったと認めた。

 1つはNTT東が2009年3月以降、旭川医大に対し、同医大が要望する追加開発の多くは仕様外であり、追加開発をすればシステムの稼働が予定日に間に合わなくなると繰り返し説明していたこと。もう1つは2009年7月に、NTT東が同医大の追加要望を受け入れる一方、「旭川医大は今後一切の追加要望を出さない」という仕様凍結の合意を取り付けていたことだ。

 札幌高裁は、仕様凍結の合意は追加開発要望の拒否に当たるとして、NTT東は開発ベンダーとして「しかるべき対応をした」(高裁判決)と認定。「これを越えて、一審被告(NTT東)において、納期を守るためにはさらなる追加開発要望をしないよう注文者(旭川医大)を説得したり、一審原告(旭川医大)による不当な追加開発要望を毅然と拒否したりする義務があったということはできず、一審被告にプロジェクトマネジメント義務の違反があったとは認められない」(同)とした。

 旭川地裁がPM義務の一環として示した「要望を拒絶する義務」を、札幌高裁は開発ベンダーが負うには過大だと判断したわけだ。

 札幌高裁は、旭川医大が契約を解除した時点でシステムはほぼ完成していたと認め、NTT東がシステムを納品できていればリース費として得られる見込みだった約15億円を、契約解除によりNTT東が被った損害と認定した。

 この15億円からNTT東が電子カルテシステム用に購入したPCやプリンターなどを転用して東日本大震災の被災3県に無償給付した約9000万円分を除くなどして、約14億1500万円の損害を賠償するよう旭川医大に命じた。

 高裁判決が改めて示したのは、ITベンダーがシステム開発に伴う懸念やリスクをユーザー企業に包み隠さず説明することの重要さだ。

 スルガ銀行が勘定系システムの開発に失敗した原因は発注先の日本IBMにあるとして同社を訴えた裁判で、日本IBMが最終的に約42億円の賠償を命じられたのは、従来の方針ではシステム開発が困難だったのに「本件システムの抜本的な変更、または、中止を含めた説明、提言および具体的リスクを(日本IBMが)告知しているとは認めがたい」(東京高裁判決)と認定されたからだ。ユーザー企業はITベンダーから適切な説明や提言を受けたうえで、プロジェクトの方針を適宜見直す重要な責任を負う点を再認識する必要がある。