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 エフエム東京(TOKYO FM)とジャパンエフエムネットワーク(JFNC)は、オーディオコンテンツプラットフォーム「AuDee(オーディー)」を2020年7月27日にリリースした。インターネット用に特化した配信専用の「オンデマンドオーディオコンテンツ」を中心に、エフエム東京およびJFNCの制作番組のスピンオフオーディオコンテンツやブランデッドオーディオコンテンツを届ける。加えて、FM放送のIPサイマル、番組発の記事コンテンツなどエフエム東京とJFNCのデジタルコンテンツを集約した。これまで両社が共同運営してきた「JFN PARK」を名称も含めてリニューアルしたもので、オーディオコンテンツの大幅拡充や操作性向上、ユーザーインターフェース刷新を図った。AuDee投入の狙いや位置付け、目標などについて、嶋裕司氏(エフエム東京 執行役員 デジタル戦略局長)と小西正喜氏(同 デジタル戦略局 コンテンツ部長)に聞いた。

(聞き手は本誌シニアエディター=田中正晴)

エフエム東京 執行役員 デジタル戦略局長の嶋裕司氏(右)とエフエム東京 デジタル戦略局 コンテンツ部長の小西正喜氏
エフエム東京 執行役員 デジタル戦略局長の嶋裕司氏(右)とエフエム東京 デジタル戦略局 コンテンツ部長の小西正喜氏
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AuDeeの位置付けや、この時期にJFN PARKをリニューアルした訳は。

 TOKYO FMは2019年2月にデジタル戦略局を発足させた。それまでデジタルを新規事業として専門的に取り組む部署はなく、WebやSNSについて編成制作局や営業局で取り組んできた。デジタル戦略局は、TOKYO FMを新たにDX(デジタルトランスフォーメーション)する試みとして「オーディオコンテンツ事業」と「データマーケティング施策」を主に推進してく目的でスタートした。オンデマンドコンテンツ事業の重要な拠点が、オーディオコンテンツプラットフォーム「AuDee」である。

 オンデマンドコンテンツ事業の強化を図ろうと考えた背景の一つとして、欧米においてポッドキャストの広告市場が非常に伸びていることがある。欧米のラジオ局は、制作したコンテンツの活用をフロー型からストック型へ転換することで業界が活性化してきた。米国のポッドキャスト市場が2018年に500億円程度だったのが、コロナ禍の影響で不透明な部分はあるが900億円あるいは1000億円程度まで伸びるともいわれている。

 TOKYO FMは2020年4月26日に開局50周年を迎えたが、その時の挨拶で黒坂修社長は「ラジオ局からオーディオコンテンツ事業者になる」と宣言した。音声コンテンツを制作して生活者に寄り添い、ビジネスにしていくという仕事の本質は変わらない一方で、制作したオーディオコンテンツは放送や通信という伝送路にこだわることなくリスナーに送り届ける企業になり、音声コンテンツ市場を切り開いていく企業になっていこうという意味だ。AuDeeはそのプラットフォームとして位置付けられており、TOKYO FMの将来を担うための新たな収益の柱を構築する重要な拠点である。

 黒坂社長がジャパンエフエムネットワークの社長を務めていた4年前にJFN PARKを立ち上げ、いち早くインターネット上でオーディオコンテンツを制作して配信することに取り組んできた。そうした経緯もあり、AuDeeは両社の共同事業として取り組んでいる。

つまり、AuDeeでは、オリジナルコンテンツに力を入れるということか。

 当然、TOKYO FMのスピンオフ番組も数多く用意し、放送から流入するきっかけを作る取り組みも進める。そして何より、多様なオリジナルコンテンツを制作し、ラジオ放送以外にも様々な形でこうした音声コンテンツを聴く文化を増やしていくことに注力していきたい。

放送では扱えないようなコンテンツも取り上げている。

 例えば、アミューズおよびAMUSE Group USAと共同で配信限定プログラムとして「トゥルークライム アメリカ殺人鬼ファイル」を制作し、8月4日から配信を始めた。毎回1人の凶悪犯罪者に焦点を当て、犯罪者の生い立ちや当時の社会情勢など事件が起きた背景まで掘り下げようという番組だが、通常の放送では届けづらい内容も取り上げることにトライしている。当然、放送局が提供するコンテンツとして超えてはいけない線はあるが、その中で色々な表現を探っていきたい。

オリジナルコンテンツの充実には、コンテンツ制作のための体制も整えないといけない。

小西 まずは、ミュージシャン系やお笑い・サブカル系など4チームを構成し、スタートした。さらに、コロナ禍の今はイベントなどが実施しにくい状況であるが、イベント事業担当者の中には番組制作経験者も多い。そうした担当者の協力も得ながら、良質なコンテンツの確保に懸命に取り組んでいる。

 番組制作現場の思考にも変化が出ている。放送枠には限界がある中でオンデマンドではこういう企画があるのではないかなど、提案を持ち込んでくれるケースも多い。

プラットフォームのリニューアルに当たって意識したことは。

小西 番組ごとにキービジュアルを、正方形に統一したデザインで全部作り直した。これまで、多くはスタジオでパーソナリティーが写るものが多かったが、ビジュアルで音声の世界観が伝わることにこだわっていきたい。

 機能面では、音声の再生スピードを変えられるようにするなど、ユーザーの利便性を考慮した。今後は、チャプター分けなども可能にして、聴きたいところにダイレクトに飛べたり、チャプターごとに検索を可能にするといったことも計画している。リニューアルに合わせて、個人情報保護のルールに従って、匿名の形でアプリの使われ方などを収集する仕組みも導入した。また、音声コンテンツのお薦め機能を充実し、よりマッチング精度の向上を図っていきたい。

ブランデッドオーディオコンテンツへの期待は。

 大きな期待を寄せている分野だ。広告主のブランド向上とエンターテインメントを兼ね備えたコンテンツのことであり、米国ではブランデッドポッドキャストが流行している。大手企業がこぞって取り組んでおり、AuDeeでも取り組みを進めていく。

 オーディオは想像をかき立てるメディアであり、その分だけ聴取者との強い絆が生まれる。目を使わないので何か行動しながら聴ける。モノにQRコードを印刷しておけば、そこからも聴けるようになる。AuDeeだけでなく、例えばSpotifyにもコンテンツを置けば、そこに誘導する広告を回すこともできる。そういう仕組みを商品化して企業に提案していく。

 例えば、2020年4月から、ソニーの「Sony presents One Point Story」をスタートさせた。ソニーのサイトでは動画の形態にして同コンテンツが使われており、オウンドサイトのリッチ化にも貢献している。AuDeeで聴いてもらうだけでなく、広告主のプロモーションツールとしても使ってもらっている。8月5日には、AuDeeとして第1弾となるブランデッドオーディオコンテンツ「劇団松屋」の配信をスタートした。これも、AuDeeだけでなく、SpotifyおよびiTunesでも聴くことができるようにした。

 ぜひ今後取り組んでいきたいのが、モノあるいは店から音が出る仕組みだ。「Audio of Things」略して「AoT」といったキーワードで世の中に普及させていきたいと思っているのだが、ぜひ挑戦してみたい。

AuDeeだけでなく、Spotifyなどにも置くということか。

 Spotifyとはビジネスパートナーとしてあらゆる場面ですでに連携をしている。音声コンテンツにスポンサーが付いている場合は、プラットフォームをまたぐことでリーチが多くなるほうが広告主にとってメリットがある。ただし、最新の音声コンテンツだけはAuDeeにあるなど、差別化は今後考える必要がある。

 ブランデッドオーディオコンテンツは、TOKYO FMあるいはジャパンエフエムネットワークの営業が、日ごろ扱っている番組とセットで提案できるし、スポンサー自身による新しい様々な活用も可能となる。営業を行う上でも、いい循環が生まれている。

デジタルオーディオアドへの取り組みは。

 もちろん取り組みを進める。以前発表した米AdsWizz社との契約は解消したが、国内にもシステムを提供する広告会社は数多くある。我々はアプリを一新し、オーディオアドを挿入できる体制を整える。そのあと、オーディオアドの提供会社と接続していくことは実施していきたい。ただし、デジタルオーディオアドだけで全てがリクープできるとは考えていない。ブランデッドオーディオコンテンツは我々の強みである営業力が生きる。ここである程度の収入を得ながら、オーディオアド、さらにはコンテンツ販売などBtoCを組み合わせながら展開していきたい。

小西 例えばゲーム実況グループ「White Tails」が2020年4月からオリジナル番組の配信を行っているが、8月5日にはこのコンテンツから生まれたラジオCDの予約受け付けを開始、あっという間に想定を大きく超える申し込みがあった。

 全部のコンテンツでできるわけではないが、こうした可能性のある展開も存在している。他にも月額課金によるコンテンツ販売の取り組みなど、様々なことを構想している。

JFN各局への呼びかけは。

 既に「ふるさとステーション」としてエフエム山陰と連携している。他の複数の局からも要望が来ており、トライとして入ってもらうことも考えている。いずれは、JFN加盟38局が自社のコンテンツを制作しマネタイズできるプラットフォームにしていきたい。

ラジコとの関係はどう考えているのか。

 大前提として、現在TOKYO FMはラジコと寄り添っていこうと考えている。2019年秋以降はJFN加盟各社にラジコへの参加の呼びかけもしてきた。2020年秋には全社のラジコ参加が完了する見込みである。

 AuDeeは、結果としては放送の同時配信も聴けるし、ラジオ発のエンタメニュース記事などを扱う「TOKYO FM+」も閲覧できるTOKYO FMおよびJFN加盟各社の様々なデジタルコンテンツを扱う統合的なプラットフォームでもある。

今後の目標は。

 月間ユニークユーザー数はJFN PARKのときに約60万人だったが、ローンチ以降毎月、大きく増加している。2020年中に100万人を目指し、それ以降もAuDeeの規模を拡大していきたい。また、Spotify以外の音声系、あるいはニュースサイトなど非音声系などコンテンツのタッチポイントの拡大も進めたい。

 AuDeeは、Audioにeを2つ重ねた造語で、オーディオを多く聴く人を意味する。オーディオコンテンツを聴いて、それによって人生が豊かになっていく人が増えてほしい、という願いを込めている。音声コンテンツ市場を切り開く新たな試みに、より一層チャレンジしていきたい。