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 「システムの品質やアイデアの良さに価値があり、それに対価を支払うべき」というのは誰もが理解するところだ。だが、ある天才エンジニアが1秒のひらめきで素晴らしい提案を示したとして、そのアイデアに見合った対価を支払う決断を誰ができるだろうか?オーナー企業の社長ならばできるかもしれない。だが、サラリーマンにはその決断はできない。1秒に100万円を払えないが、1人月ならば払える。それが会社組織の現実であり、逆に組織とはそうあるべきだ。

 それでは、問題は人月単価ではなく、多層下請け構造なのか?確かに下請けから孫請け、さらにその下と多層化すればユーザーが支払うコストは増大する。そして実際に現場で働くITエンジニアは労働環境的にも報酬的にも過酷になり、ブラック化するリスクが高くなる。

 だが、コストが高くても大手に発注するユーザーの理由は「規模が小さなベンダーに委託してプロジェクトが失敗したら『なぜ、そんなベンダーに出したのだ』と責任問題になるが、大手なら『あそこに頼んで失敗したなら仕方ない』という空気になる」であろう。

 ユーザーと開発者の利害が複雑に絡み、会社組織の意思決定プロセスにも因果関係が深い人月単価と下請け構造はまさに必要悪の典型だ。だが、やはり本質的には是正すべき課題であり、今ボールがどちらにあるかといえばユーザー=発注者側であろう。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP社)など