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長時間労働是正を現場に丸投げする愚

 ふわふわした改革と書いたが、「企業のイメージアップ大作戦」といった趣の従来のワークスタイル改革よりも、はるかにソリッドではある。なんせ、少子高齢化がどんどん進む中、主要先進7カ国の中で最も低い労働生産性を放置すれば日本は大変。そんな危機感が政府を働き方改革へと突き動かしている。それに過労死の問題がクローズアップされたこともあり、よほどのブラック企業でもなければ働き方改革は重い経営課題となっている。

 では、働き方改革で各企業は何をやっているのかと言うと、長時間労働の是正、それに在宅勤務などのどこでも働ける環境の整備などだ。このうち、どこでも働ける環境の整備は、一種の仕組みづくりとして比較的目に見える形で取り組まれている。情報システム面などの対応が必要となるから当たり前だ。あるCIO(最高情報責任者)が「現状の働き方改革は“働く場所改革”の面が強い」と喝破していたが、まさにその通りである。

 長時間労働是正のほうは、よほど先進企業でない限り、改革とは言えないほどプアーな内容となる。「残業は極力減らそう」「有給休暇の消化率を高めよう」と従業員に呼びかける。長時間労働是正に向けた会社の仕組みづくりの話にならず、現場の従業員の“努力”に期待する。つまり働き方改革ですら、現場丸投げで愚かな極みのカイゼンが顔を出す(関連記事:「世界に誇るカイゼン」は錯覚、日本企業はデジタル化で滅亡するぞ!)。

 いよいよ本題なのだが、この程度の取り組みで「余計な残業が減ったぞ」と喜ぶ人もいるので、その辺りの理屈について少し言及しておく。そういう事例は大企業に多い。なぜ長時間の残業が、経営者の鶴の一声だけで突然減らすことができたかと言うと、本来やる必要がない業務を削ったからである。例えば、単なる情報共有のため、あるいは責任の押し付け合いのために開かれる社内会議の廃止などだ。

 まあ、その意味では、現場の努力、カイゼンによる長時間労働の“是正措置”もそれなりに意義があると言えなくもない。だが問題は、やらなくてはいけない業務をどうするかである。それを「効率的に仕事をしよう」などと言って、現場の従業員に丸投げしているのは経営の怠慢だ。ましてや「ダラダラ働いて夜に残業する」などというダメ・ホワイトカラー論を真に受け「ダラダラ働くな」と命じるのは、もうけしからぬことである。