PR

真っ先に働き方改革に取り組むべきは誰?

 業務改革やシステム刷新という抜本策を打つことなく、ワークスタイル改革改め働き方改革に乗り出したどうなるか。先ほど指摘したような本来は不要な仕事を多数温存していた大企業を除けば、長時間労働の根本的な是正は難しい。それどころか、働き方改革のためのカイゼン活動や、働き方改革のための会議など余計な仕事が増えるだけかもしれない。

 だが、企業は結果を出さなければならない。現場に「早く帰れ」とプレッシャーがかかった結果、長時間労働の実態は“地下に潜る”。今でも横行している“サービス残業”が増えるだけだ。「今日はノー残業デーなので、オフィスを定時で退社しファミレスで残業」といった笑えない話は至るところにあるが、今後ますます長時間労働の実態が見えにくくなる恐れがある。

 そんな状況の中で、どこでも働ける環境がITによって整備されたら、さらに恐ろしいことになる。既に電子メールやワークフローシステムの普及で、どこでも、そしていつでも働かなければならない環境がドンドン増殖している。休日でも社用メールを読むことが当たり前のようになっているが、社用メールを読む行為は仕事である。また、以前なら決裁者が不在の時は誰かが代理決裁していたような案件でも、遠慮容赦なくワークフローが飛んでくる。

 そして、在宅勤務を実現するシステムが様々な企業に導入されると、長期休暇を取りたい人も在宅勤務で我慢せざるを得ない状況も予想される。業務プロセスが標準化・見える化されておらず、業務が属人化されたままだと「余人をもって代えがたい」わけで、「休まれると困るので、在宅勤務の仕組みを使って働いてくれ」なんて話だ。もちろん、出社するよりはるかにマシかもしれないが、働き方改革の本来の趣旨からは完全に逸脱する。

 ここまで話を単純化するために、人事制度や給与面などの課題は捨象して書いてきたが、要は抜本的な業務改革やシステム刷新も含め、働き方改革という経営の責任を現場に丸投げするなということだ。そして最後に「ダラダラ働いて夜に残業する」という認識の問題について、もう一度言及しておく。

 現場の従業員はなぜ「ダラダラ働いて夜に残業する」のだろうか。経営が「そりゃ残業代狙い」と思っていたら完全にアホ。そうせざるを得ないのは、経営幹部の意思決定が遅いからだ。「起案しても会議ばかりで結論が出ない」「承認を依頼しても、マネジャーがどうでもよい会議のため不在で決裁してもらえない」など理由で、“ダラダラ”せざるを得ないことがあまりに多い。真っ先に働き方改革に取り組むべきは、実は経営幹部なのである。