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 特に製造業で目立つが、ユーザー企業の多くのIT部門は社内で孤立し、タコツボ状態に陥っている。最後に大規模なシステム開発を手掛けたのは10年以上前。今、IT部員たちはディスプレーを見つめ続けて一日が終わる。開発案件が無いから、経営層や事業部門とコミュニケーションを取る機会もめったに無い。事業部門ではデジタルビジネスに取り組み始めたと聞くが、IT部門は蚊帳の外だ。

 CIO(最高情報責任者)やシステム部長はさすがにマズイと思う。このままではIT部門が無用の長物と思われてリストラ対象とされ、ITベンダーにフルアウトソーシングされかねない。そこまで行かなくても、社内にはデジタルビジネスのためのシステムの構築に向け新たなIT組織、いわゆる第2のIT部門を作ろうという話もある。企業ITを一手に担う専門部署の地位は風前の灯だ。

 というわけで、CIOやシステム部長、そしてIT部門のマネジャーは、現状を打開する方策をあれこれと考える。だが、タコツボ化してしまっている組織では、良いアイデアなんぞは生まれてこない。議論は行き詰まり、「うーん、やっぱり必要なのはダイバーシティ(多様性)だよな」なんて話になる。で、「そうだ、まずは事業部門との交流人事をやろう」と古色蒼然とした案に落ち着く。

 で、事業部門に誰を出すかという話になる。大概はエース級の人材と出来ない人は出さない。出来ない人については、それりゃ、そうだ。そんな人を異動させれば、事業部門に迷惑がかかる。というか、IT部門の沽券にかかわる。エース級人材も出せない。エースを出したら、IT部門の業務に支障を来すと考え、そこそこ優秀な人を事業部門に送り出す。

 一見、もっともな話と思えるが、実はエースを出さない時点で、事業部門との交流人事は失敗が決定する。当然、事業部門からIT部門に来る人も、そこそこ優秀な人だ。で、多くの場合、IT部門から事業部門に異動した人と、事業部門からIT部門に来た人とでは、働き度合いが全く対照的となる。IT部門から事業部門に異動した人はとにかく一生懸命に“働く”のだ。