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 ITベンダーが顧客という某社の営業の人と話をした、その人はIT業界を担当するようになって半年。で、人月商売や多重下請け構造の実態を初めて知り、とても驚いたという。「もうビックリです。日本にこんな産業がまだあるなんて。まるで蟹工船」。その話を聞いて、私は「やはり普通の人からすると、IT業界はとんでもない世界に見えるんだ」と妙に納得した。

 では、当事者のITベンダーの経営者や幹部が、このままでよいと思っているかというと、実はそうでもない。「このままではマズイのは分かっているが、客あっての商売、客が変わらなければ我々も変われないんだよ」。これは、ITベンダーの経営者や幹部に「人月商売をいつまでやっているんだ」とツッコミを入れた時、必ず返ってくる言い訳だ。

 SIerはユーザー企業のIT部門、下請けベンダーはSIer、孫請けベンダーは下請けベンダーがそれを求めるからと言う。4次、5次、6次…と多重下請け構造の底辺のベンダーに聞いても、それは変わらない。「自分たちがこんな商売をしているのは客のせい」と皆が言い訳する。言い訳まで多重構造だから、この業界は救われない。そして現代の「蟹工船」は延々と続いてきた。

 ユーザー企業のIT部門やSIerの人からすると「自分たちの仕事を小林多喜二の『蟹工船』のような悲惨な話に例えるとは何事」と憤慨するかもしれない。だが、IT業界の実態を知らなかった人が見ると、そう見えるのだ。IT業界をよく知る私からしても、おおむねアグリーだ。多重下請け構造の底辺のベンダーでは、経営者が「技術者を○○万円で売った」といった言い方を平気でする世界だ。

 多重下請け構造の底辺では、好況時でも人月単価が40万円台の案件もある。円安が進んだ今となっては、中国などオフショア先のITベンダーでも、そんな単価では請け負わないだろう。これでプロジェクトが大炎上してデスマーチ状態になったら…。IT部門やSIerの技術者に「所属する企業の枠を超えチーム一丸となって難局を乗り越えよう」と言われたところで、安月給の技術者にとっては悲惨なだけである。