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 SIerなど大手ITベンダーにとって、理想の営業とはいわゆるソリューション営業だ。ハードウエアやパッケージソフトウエアなどモノを売るのではなく、「お客様の課題を深く理解し、その解決策をご提案する」というやつだ。実は私には、この件で以前から不思議に思っていることがある。ITベンダーはなぜ、そんな“優れた”ソリューションを無能なIT部門に売り込むのだろうか。

 無能なIT部門とは、システムを内製したことがないか、かつてあったとしても10年、あるいはそれ以上前の出来事で、今や部員の数が減り、既存のシステムの保守運用までITベンダーに丸投げしている素人集団のことだ。当然、技術のことはほとんど分からない。システム開発をやっていないから、経営や事業部門とのコミュニケーションも少なく、経営戦略どころか、ビジネスのこともよく分からない。

 私はこの「極言暴論」で、こうした無能なIT部門の問題について何度も暴論してきたが、世の中には凄いIT部門、まともなIT部門もそれなりに存在する。そんなIT部門の人に話を聞くと、「ITベンダーからまともなソリューション提案を受けたことがない」と口をそろえる。うーん、不思議だ。なぜSIerの営業担当者は、無能なIT部門にだけ足繁く通って、ソリューションを提案するのだろうか。

 そろそろ呆れ始めたり、怒り出したりした読者もいるのでは、と思う。「何を言っているんだ。自分たちで課題や解決策を明確にできず、要件をまとめられないようなお客様にこそ、我々が代わってソリューションをご提案しなければならないんだ」。SIerの経営幹部や営業担当者なら、そう思っているだろう。つまり、客が素人だからソリューション提案の意味があるというわけだ。

 でもね、相手はまさに素人。優れたソリューションを提案したとしても、無能なIT部門ではその価値を評価できない。まさに「豚に真珠」「馬の耳に念仏」だ。そのユーザー企業がどんなに大企業であっても、ソリューションの提供と称してスクラッチ開発なんかを請け負うべきではない。価値を理解できない相手に、ソリューションという価値を売ろうとすると、その代償は大きいからだ。