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 先日、小売業のCIO(最高情報責任者)の人と話していて、互いに激しく同意したことがある。それは「大規模プロジェクトを担当してきた技術者よりも、小規模なプロジェクトを担ってきた技術者のほうが、優秀な人が多い」というもの。もう少し踏み込んで私流に暴論すると、ITベンダーかユーザー企業かを問わず、大企業の技術者の力量は大したことがない。

 もちろん、大規模プロジェクトを担う技術者や、大企業に所属する技術者にも優れた人はいる。そうでないと、プロジェクトは破綻し、ITベンダーなら倒産してしまうだろう。だが、必ずしも技術者だけの職とは言えないプロジェクトマネジャーを除けば、「この人、本当にすごいな」と思える技術者は、少人数のITベンダーに所属していたり、中堅のユーザー企業で“ひとり情シス”をやっていたりする。

 いま「プロジェクトマネジャーを除く」と書いたばかりだが、実はプロジェクトマネジャーも、大企業では一握りの“スーパーマン”を除けば、優秀な人材がそろっているかと言えば、はなはだ疑問だ。例えば、大手ITベンダー、つまり大手SIerの経営幹部に人材面での課題を聞くと、大概は「若手の優秀なプロジェクトマネジャーがなかなか育たない」といった答えが返ってくる。

 ここで話の脈絡を無視して、航空業界のパイロットのことを書く。ITの世界で大規模プロジェクトが花形の仕事ならば、航空業界での花形は国境を越え長距離を飛ぶ国際線だ。当然、空を目指す若者は国際線のパイロットに憧れる。だが、国際線中心の大手航空会社は、国内線中心のローカル航空会社に比べ、実は優秀なパイロットを育てるのが難しいのである。

 長距離の国際線や大規模なシステム開発プロジェクトでは、優秀な人材が育たない。こう関連付けると、私が何を言いたいのか気付いた読者も多いと思う。だが、航空業界のパイロット育成に比べ、ITの世界での技術者育成の問題のほうが、はるかに複雑で深刻だ。煎じ詰めれば、大規模プロジェクトや大企業には「技術者が優秀にならない」構造が組み込まれているのだ。