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 基幹系システムの再構築案件でITベンダーから法外な料金を提示され、激昂しているシステム部長から話を聞いたことがある。「ITベンダーに見積もり根拠を示せと言っても、明確なことは何も言わないのだよ。ぼったくろうとしているとしか思えない」。その人は憤懣やるかたない様子だった。

 この話をユーザー企業のIT部門の人とITベンダーの人にすると、両者で反応が全く違うから面白い。IT部門の人は、ほぼ間違いなく「ITベンダーはけしからんですね」といった反応になり、人によっては「ひょっとして、そのベンダーは○○○社じゃないですか」と聞いてきたりする。まるで自分が被ったITベンダーの過去の仕打ちと、この話を重ねているかのようだ。

 一方、ITベンダーの人は「なるほど」「そういうことですか」と言ったきり、大概はこの話をスルーする。実はITベンダーにとって、こうした話は日常茶飯事のこと。営業担当者なら自分自身が過去に何度も、法外な料金をユーザー企業に提示したことがあるはずだ。そして見積もりの根拠を聞かれても答えようがない。ぼったくりと言われても、素知らぬ顔をするしかない。

 なぜか。そのユーザー企業が“危ない客”だからだ。プロジェクトの途中で要件が揺らいだり膨らんだりするリスクが高い。ただ、見積もりの根拠を聞かれて「おたくは危ない客だから」とは言えない。危ない客には絶対に理由を説明しないが、リスク分を反映した料金を提示する。これがITベンダーの営業担当者の“掟”だ。

 だから、こんな話もある。ある案件のコンペに参加したITベンダー。リスクの高い案件だったので、失注やむなしで、リスク分を乗せた相当高めの料金を出した。そうしたら、他のベンダーも全く同水準の高めの料金を出していた。ユーザー企業は「談合だ」と騒いでいたようだが、もちろん談合ではないことは、もうお分かりだろう。