
地上では一人のオペレーターが複数のドローンを操作し、諜報活動や軍事攻撃を遂行する。これが画期的な技術であるのは、現行オペレーションと比較すると一目瞭然だ。現在、ドローンは専任オペレーター(機体操縦担当) とセンサー・オペレーター(カメラなどのセンサー操作担当)が操作し(上の写真)、多数のアナリストが状況を判断する。このため、多数のドローンを展開することができず、流動的に変化する戦況に追随できないという問題がある。
このプロジェクトは「Collaborative Operations in Denied Environment(CODE) 」と呼ばれ、現行ドローンのソフトウエアやアルゴリズムを改良することで実現する。ドローンは機体の状況や戦況をリアルタイムにモニターし、基地の司令官に次に取るべきアクションを推奨する。司令官はこれを承認・否認するか、または継続してデータを収集するよう指示できる。
共同自律飛行することで、一人のオペレーターが6機以上のドローンを操作できる。また、異なる機種のドローンを組み合わせ、共同でミッションを遂行できる。オオカミの群れが共同で獲物を狙う様子を模した作戦である。
民間企業との共同研究
このプロジェクトでは、DARPAが選定した企業と共同で開発を進めていく。DARPAはプロジェクト概要を公開し、参加企業を募っている。CODEは軍事目的の技術開発で、DARPAの指揮の元で民間企業が開発することになる。DARPAの開発成果は、多くの場合民生用に展開されてきた。このケースでも、民間企業がCODEをベースとしたドローンを開発することが予想される。
これは、Google自動運転車誕生の経緯とよく似ている。DARPAはGulf War(湾岸戦争) を契機に、自動走行するトラックの開発に着手した。トラックで物資を輸送中に敵の攻撃を受けても、死傷者を出さないためである。この研究をコンペティション形式で実施したのが「DARPA Grand Challenge」で、スタンフォード大学「Stanford Racing」が優勝した。Googleが総責任者Sebastian Thrunとともにチームを買収し、これが現在のGoogle自動運転車につながっている。CODEは“空の自動運転技術”とも解釈できる。高度なドローン自動航行技術の種が、まかれたことになる。