PR

今回は、既存企業におけるイノベーション創出の話題です。ベンチャー企業に比べて大企業ではイノベーションが生まれにくい、とはよく言われますが、ブランク氏はその原因を、よく使われる「失敗」をどう捉えるかというところから紐解いています。(ITpro)

 私は、とても賢明な大企業の「チーフ・イノベーション・オフィサー」のボブと丸一日を過ごしたところです。この会社を、仮に「アクメ・ウィジェット」(最高の機器)社と呼びましょう。

 ボブは、アクメのイノベーションを妨害している要因を、以下のようにまとめました。

 「私の会社には、失敗を恐れる文化があります。失敗したプロジェクトは、会社での職歴にとってマイナスだと考えられているのです。その結果、成功しないかもしれないプロジェクトを始める人は、まれです。

 さらに、もっと悪いことは、誰かが新しい事業を始めたとしても、我が社の経営構造には、多大の財務的、法律的、人事的なハードルがあり、全ての新しい事業は、既存の事業の事業財務の測定基準、プロセスと手法に対応しなければなりません。

 その結果“分析による麻痺”に陥り、失敗をしないように、全てのアイデアに対して全員の合意をとるので(もし失敗した時には、集約されるであろう非難を分散できるように)、進展は遅くなります。

 そして、もし賭けに出たとしても、改良的な製品に少しだけ賭けるか、最終収益に加えるために他社を買収します」

 ボブは、物思いにふけるようにこう言いました。

 「当社の創業者は、リスクをとり、迅速に実行することで知られた会社を構築しました。それが今では、過去の成功に依存して『数字を上げる』会社として知られています。より俊敏な競合他社が、私たちの事業を侵食し始めています。どうすれば、当社のイノベーション文化を再開できるでしょうか」

何が、イノベーションを推進するのでしょう?

 私はボブに、皮肉な事実を指摘しました。すなわち、大企業では「失敗への恐怖」がスピードと冒険を阻害し、スタートアップ企業では「失敗への恐怖」がスピードと緊急性を推進するということです。

 もし私たちが、両者の違いについて根本的な理由を理解できるなら、アクメが継続的なイノベーションのためのシステムを構築するのを支援できる、と私は伝えました。

 私は、21世紀のスタートアップ企業の定義から会話を始めるのが良い、と提案しました。それは、スタートアップ企業とは、繰り返しが可能で拡張できるビジネスモデルを「探し求める」一時的な組織だ、というものです。

 スタートアップ企業は、資金が無くなる前に製品と市場の適合性を見つけないといけないので、時間と資源が限られています。ですからスタートアップ企業は、確実性とスピードをトレードオフし、「今はこれで十分」という決断法を採用し、反復とピボットを繰り返しながら、失敗し、学び、ビジネスモデルを見つけます。

 反対に大企業は、 反復ができて、拡張できるビジネスモデルを「遂行する」恒久的な組織です。

 これは、大企業の中核事業には、多くの既知の事項が集約されていることを意味します。彼らは、製品と市場の適合性(顧客が、どの製品を購入したいか)を既に見つけています。企業から顧客に製品を届けるための最適な流通網を学び、収入モデル(定期購買、ライセンス販売、直販など)や、製品の価格を決める方法を理解しています。また、必要な活動、資源とパートナー(製造、規約、IP、供給チェーンなど)や、製品/サービスを提供するための経費を理解し、よく定義された製品開発と製品管理ツールを持ち、既存顧客に対して製品を直線的に出荷することを重視します。

 新しい製品開発には、即時の収益を強調した財務的な測定基準(投資回収率、最低収益率など)があります。全ての従業員には役職名が付いており、業務執行に関する彼らの役目を記述した、職務記述書もあります。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料