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前回に引き続き、今回も既存の大企業におけるイノベーション創出の話題です。既存の業務遂行とイノベーション創造を併存させるための取り組みですが、イノベーションチームが自分たちにふさわしいルールを提案するという画期的なものです。(ITpro)

 私は、ある多角経営企業の最高イノベーション責任者のロバートをサポートしています。この企業を、仮に「スプロケット(歯車)工業」と呼びましょう。

 しばらくロバートから連絡がなかったのですが、コンタクトがあったとき、彼の当初の楽観性がなくなっていたことは明らかでした。スプロケット工業が直面している、新しいイノベーション・プログラムに対する障害をロバートが列挙するのを私は聞きました。

 「私たちは、各事業部門と会社全体にイノベーション・チームを創設しました。CEOは、このプログラムを全面的に支持しています。部門長たちは、それぞれ支援を表明してくれました。しかし、チームがどうしようもないと感じる障害に、全社にわたって直面しています。財務、人事、ブランディング、法務、その他の全ての部門と本社のスタッフが、私たちの望むことができないと言い訳しています。各部門と本社の全てのスタッフには拒否権があって、変化を起こそうという緊迫感がありません」

 ロバートはいらだっており「どうすれば、これらの組織が私たちを支援して、イノベーションを推進できるのでしょう。CEOはこの問題を解決するため、著名なコンサルティング会社を雇って、全ての事業執行プロセスをやり直したいと望んでいます」

 おやおや――。

 スプロケット工業の最高イノベーション責任者のロバートは、年間売上数10億ドル(数千億円)規模の大企業の最高経営幹部の1人であり、全社のイノベーション戦略の責任者です。過去9カ月にわたり、彼のスタッフは、迅速に緊迫感を持ってイノベーション・チームを推進しています。

 イノベーションのパイプラインは合理化され、彼の直属のグループは、リーン手法を全面的に取り入れ適応しています。彼のグループは、「Horizon3」に分類される破壊的な実験を行う企業全般のインキュベーターを運営し、「Horizon1」と「同2」に分類される、各事業部門のプロセスとビジネスモデル・イノベーションを支援しています。

 彼は週末のハッカソンに、何百人の従業員が参加する、イノベーション・パイプラインを持っており、45のイノベーション・チームが、3カ月の高速リーン・ローンチパッド・プログラムに参加して、製品と市場の適合性を検証しています(訳者注:Horizon1、2、3は、クリスチャン・ターウィッシュ氏とカール・ウリック氏が提唱している「イノベーションの展望」による)。

 次の日にロバートと私は、認識している限りのスプロケットのイノベーションの謎を、一緒に列挙しました。

・スプロケットは確立された会社で、繰り返しができ、拡張可能なビジネスモデルを遂行するようにデザインされています

・ロバート直属のイノベーション・チームは、一時的な組織で、繰り返しができて拡張可能なビジネスモデルを、探し求めるようにデザインされています

・スプロケットは、世界的な資源と能力として、ブランド、サプライ・チェーン(供給網)、流通網、販売戦力、財務測定基準などを持っています。その全てが既存のビジネスモデルを業務遂行するように最適化されており、新しいビジネスモデルを探すためではありません

・業務遂行用に最適化された資源と能力は、新しいビジネスモデルを探し求めるのに必要なプロセスを妨げます

・スプロケットは、業務遂行用に有効なプロセスを維持しながらも、イノベーション向けには新しい異なったプロセスが必要です

・スプロケットは、業務遂行(ブランド、サプライ・チェーン、流通網、販売戦力、財務測定基準)を支援している同じ組織を、イノベーションの支援にも使用したいと望んでいます

 ロバートのグループは過去9カ月をかけて、なぜ継続的なイノベーションをもたらす必要があり、なぜ業務執行とイノベーション・チームが協力することが必要なのかを、会社に教えてきました。加えて、多くのセオリー、ポスター、メモを掲げ、イノベーション的であることへの賛辞も示しましたが、効果はありませんでした。

 どうすれば良いのでしょうか?

 全ての事業プロセスをトップダウンで改造することは最後の手段だと、私は提言しました。私はロバートに対して、6カ月の間、「Get to Yes(承認して下さい)プログラム」を試みるように提案しました。外部のコンサルタントではなく彼のチームが、自社のイノベーション・プロセスと手順を起案するのです。