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 今回は、耳が不自由な人向けのサービスを開発したスタートアップ企業のピボット(事業の軌道修正)にまつわるエピソードです。スタートアップの成功に重要なのが、自身の欲望ではなく顧客のニーズである、というリーン・ローンチパッドの基本を実感できる話題です。(ITpro)

 2014年、ティーボルト・ダッケミンと彼のチームが、カルフォルニア大学バークレー校のリーン・ローンチパッド・クラスに応募してきました。ティーボルトは、耳の不自由な家族の中で、自分だけが聞こえるという環境で育ちました。この個人的な問題の解決に、彼が突き動かされているのがはっきり見てとれたので、彼のチームを受け入ることにしました。彼のチームのプロジェクトは、耳の不自由な人たちに対して自動的な補助手段を提供するものでした。

 以下が、彼のストーリーです。

リーン・ローンチパッド――1年後

 1カ月前、私の創業仲間の1人であるジェイソンは、自身のスタートアップ企業を閉じました。彼のスタートアップが失敗したのは、全ての創業者が繰り返し聞いている第1の法則を忘れたからです。それは、「あなた自身が証明しなければ、誰もあなたの製品を必要としません」ということです。

 どうしてこんなにも多くの創業者が、何カ月も何年も懸命に働いた後で、この最悪の現実に目覚めるのでしょうか。

 ジェイソンのストーリーを聞いて、私たちのトランスセンスの創業過程において、リーン・ローンチパッド手法による経験がどれほど重要だったか、私ははっきりと気づきました。 そして今では、時間と努力が必要にもかかわらず、私たちはオフィスを出てユーザーと会うことをいといません。

リーン・ローンチパッドの前――耳の不自由な人たちに声を与える

 私の個人的な問題を解決するため、リーン・ローンチパッド・クラスに壮大かつクレージーなアイデアを応募したときから、全てが始まりました。私は耳が不自由な家族の中で、唯一耳が聞こえる者として育ちました。私の妹の夢は弁護士になることでしたが、高価で手の届かない通訳者なしには、彼女は最終弁論も依頼者との面談も、不可能だったのです。

 UCバークレー校で、私は手話を翻訳するスマート手袋を作成しようと決心しました。私の共同創業者のピーターと一緒に、最初の基礎的なプロトタイプを作成し、それが賞金を得たためチームが発足しました。それは、バークレー校の集会場でよく見られる、オタク的サイエンス・プロジェクトでした。そして私たちは「手袋オタ」になったのです。

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 それはまた、スティーブ・ブランク氏と出会ったころでもありました。彼は、手話用手袋よりむしろ、私たちの問題解決への情熱に興味を持ちました。

 スティーブは、最初のアイデアが、ごく一部のユーザーにしか受け入れらないことを知っていました。リーン・ローンチパッド・クラスに入るために、私たちはそれを認めざるを得ませんでした。「私たちは、手話用手袋に固執しているわけではありません」と言って、ピボットする可能性を受け入れました。もう元には戻れなくなりました。