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 政界を揺るがす森友学園への国有地払い下げ問題で、にわかに流行語になった感のある「忖度(そんたく)」。他人の心、気持ちを推し量ることをいうが、普段はめったに読み書きすることがない言葉だ。少しニュアンスが異なるが、今ふうの「空気を読む」と同様、いかにも日本人らしい思考・行動パターンを表す言葉と言ってよい。

 忖度も、空気を読むも、日本人の美徳である思いやりの心の発露と見ることができる。だが、ビジネスの世界においては、森友学園問題を例に挙げずとも、誰かの本音を過剰に忖度すると、ロクなことにならないのは明らかだ。ビジネスにおいては、相手の話をしっかり聞き、言うべきことを言わないと、将来に大きな禍根を残す。これはビジネスパーソンの常識のはずだ。

 だがシステム開発においては、その常識が怪しくなる。例えば、あるITベンダーが大手製造業に提案した際、相手のIT部門から「それは社長がウンと言わないだろう」「事業部門が抵抗するはず」などと逡巡する言葉をいくつも聞いた。まさに典型的な忖度だ。

 問題なのは、この商談がERP(統合基幹業務システム)導入の案件だったことだ。しかも、IT部門から「社長の意図は業務改革による生産性向上」という話を聞いていたので、ITベンダーは「コンサルタントを入れて業務の全体最適を目指す」という当たり前の案を提示したのだ。

 IT部門は「社長が言う業務改革とは現場のカイゼン」と認識していたようだが、経営者に確認したわけではない。まだプレ商談の段階の話で、その後ITベンダーがどう対処したかは確認していない。ただ最初からこれでは、下手をすればプロジェクトはとん挫、完遂したとしてもアドオンだらけのERP、従来の基幹系と代わり映えのないシステムが出来上がることが容易に予想できる。