PR

3.1.2 短尺な着うたからフル楽曲へ進化

 30秒程度の楽曲を配信する着うたに対して,楽曲を1曲すべてを配信するサービスとして「着うたフル(R)」を2004年11月からKDDIで開始した.「着うた」は短尺であるがゆえに着信時に好きな音楽を流す意味合いが強かったが,「着うたフル」では楽曲全体を楽しむことができるため,新たな楽しみ方を提供することが可能な,着うたの上位サービスとして位置づけられた.なお,楽曲全体では3~4分程度と「着うた」よりも大幅に長尺になり,ダウンロード時間などを考慮すると,AAC方式よりもさらに圧縮効率の高いオーディオ圧縮方式が必要となっていた.ちょうどそのころ,AAC方式の圧縮率を約30%向上させることが可能なHE-AAC(High Efficiency AAC)方式が,2003年にMPEG-4オーディオとして標準化されていた.実際に評価実験等を行い,これまで64kbpsでAAC符号化された音質がHE-AACでは48kbpsで同等レベルの音質を確保できることも確認できた.ただし,新規コーデック採用に伴う実装上の問題も多数あったが,ファイルサイズも1.5MB程度に抑え,ネットワークへのインパクトも緩和する目途が立ったため,採用に踏み切った[7].楽曲単価は数百円と「着うた」に比べると高額ではあったが,①PCがなくても気に入った楽曲のみをどこでも好きな時に携帯電話で手軽に購入・ダウンロードし,身近にある携帯電話ですぐにフル楽曲を楽しめる点や,②通信キャリア決済機能により,通信料金と一緒に請求されるため,クレジットカードを持っていない若いユーザでも手軽に購入できる点などにより利用数が急増した.KDDIではサービス開始5年後の2009年には累計ダウンロード数が3億曲を達成した[8]. 

 なお,2000年代前半に着メロ配信がカラオケ業界が事業者として大きく成長している中,レコード業界も原盤を保有する強みや,MIDIなどの合成音ではなくオリジナル楽曲音であることによる着メロとの差別化,さらにCD販売へのプロモーション効果などの目的で,通信キャリアと連携して着うた,着うたフルコンテンツへ積極的に取り組んできたことも,普及を大きく促進させることになった[9].

 さらに,ネットワーク環境も高速化が進み(たとえばKDDIでは,2006年12月から開始したEVDO Rev.A(第3世代携帯電話向け高速データ通信)において下り最大3.1Mbpsに増加),さらなる高音質楽曲へのニーズへ対応するために,AAC方式で最大320kbpsで符号化して高音質化を図った,「着うたフルプラス(R)」の提供を2008年12月より開始した[10].