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 我が国の高齢化率は世界的にも類を見ない早さで上昇しており,高齢者の見守りが必要不可欠であると報告されている.一方で,高齢者のインターネットの利用率が向上しているという報告からは,高齢者にとって情報システムが身近なものになりつつあると推測することができる.これらの背景から,我々は,従来のモニタリングを主体とする見守りの手法ではなく,高齢者自らが情報システムを利用する形式の見守り活動を進めている.また,この情報システムの利用記録を用いた認知症の早期発見の可能性にも着目して,情報システムの開発や利用記録の解析を進めている.本論文では,2012年2月に実施したAndroid 端末による高齢者向け情報システムの実証実験の評価結果を報告し,情報システムの利用記録を用いて高齢者の認知機能の低下を検知するための解析手法を提案する.

1.はじめに

 我が国の高齢化率は年々増加の一途をたどっており,2011年10月1日に23.3%となった.高齢化率は,国の総人口に占める65 歳以上の高齢者の割合を表す指標であり,我が国は世界的に類を見ない早さで今後も高齢化が進むことが予測されている[1].また,高齢化率の増加に伴って「買い物難民」と呼ばれる問題や独居高齢者の「孤独死」の問題[2] も増加しており,厚生労働省からは地域社会の中での高齢者の見守りの必要性が報告されている[3].一方で,我が国の情報基盤システムの敷設率は先進各国の中でも高い割合を保っており,近年では高齢者のインターネット利用率も上昇している[4].また,高齢者が周囲の人からの働きかけによって,ICTの楽しさを知ることで関心や利用意欲を持つことも報告[5] されており,情報技術が高齢者の生活の中に溶け込んで身近なものになりつつあることが推測できる.

 このような背景から,我々は高齢者向けの情報システムを開発し,高齢者のQOLの維持や向上を目的とした見守り活動を展開している.特に,高齢者が利用する情報システムの利用記録を用いて認知症が早期発見できる可能性に着目し,長期実証実験の実施を目指している.我々の研究は,インタビューやアンケートによる高齢者の生活様式を調査するフェーズ,プロトタイプ版の情報システムによる実証実験を進めるフェーズ,そして,長期実証実験を実施する3 つのフェーズから構成される.本論文では,プロトタイプ版の情報システムを用いた実証実験で得られた高齢者向け情報システムの評価結果を報告し,この情報システムの利用記録から高齢者の生活状態が再現できることを示す.そして,最後に認知症の早期発見に向けた解析手法の提案を行う.