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 要求工学知識体系(REBOK: Requirements Engineering Body Of Knowledge) は,現場で要求工学を実践するために,実務家と研究者が協力して世界に先駆けて開発し,2011 年6 月に刊行した.REBOK の開発では,ソフトウェア工学知識体系(SWEBOK),ビジネス分析知識体系(BABOK),プロジェクトマネジメント知識体系(PMBOK) などの関連する知識体系や国際規約を分析し,これらの知識体系を関係づけ,要求工学全体を対象とする知識体系の確立を目指した.そのため,知識体系(BOK) とその構築方法のあり方に立ち返って,BOK の構造と知識の表現方法などの根本から検討した.これに基づき,要求工学の諸知識をグローバルな共通性と我が国固有の技術の両面から再構成し,実務家の視点から有用性を評価し,整理した.REBOK に基づき企業内での専門家育成や大学の教材開発が進んでいる.本稿は,REBOK 開発の背景,REBOK の知識体系の構造や特徴,活用などについて紹介する.

1.はじめに

 要求工学を適用した要求定義は情報システム開発の成否を握る最も重要な活動である.しかし,要求工学の知識は広範,かつ,多様であるため,その習得と実践は容易ではない.本稿では,要求工学を現場において習得,実践し,あわせて,人材育成のガイドラインとして,わが国の現場の技術者と要求工学の専門家が協力して開発した要求工学知識体系REBOK (Requirements Engineering Body Of Knowledge) [14]☆1の開発と内容を紹介する.REBOKの開発では現場で有用な知識の特定とその体系化が課題であった.この課題を解決する過程で,筆者らは知識体系(BOK)そのものの構造や体系化の方法が確立されていないという根本的課題に直面した.さらに,主要なBOKは認定試験と一体となっているため変更が難しく,技術の進化に追随できないという課題もある.筆者らは,BOKのあるべき姿に立ち返り,構築方法,BOKの構造や知識表現に至る広範な課題の解決に取り組んだ.

 本稿では,REBOK開発の背景から出発して,BOKのあり方,実践的な要求工学知識とその構造化,普及への取り組みを紹介する.実務家と研究者との複合的な視点から徹底した討議を経て生まれたREBOKは,ユーザとベンダが共通に利用でき,かつ,要求工学の全体像を理解するためのBOKとして,広く活用されることを期待している.

☆1 アールイー・ボックと呼ぶ.

世界初の REBOK は
実務家と研究者との
協力から生まれた