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 超上流工程(企画・要件定義工程)を成功させ確実にソリューションを実現するために,日本で開発され世界的に注目されている要求工学知識体系REBOK(Requirements Engineering Body Of Knowledge)を活用した初めての実践事例として,要求開発手法HyThology(ハイソロジー)を開発した.HyThology は要求工学の技術や方法論を実践するためのプロセスモデルと技法のガイドラインである.本稿では,REBOK の実践例として,HyThology の開発・適用で行ったプロセスと技法の可視化,高度IT 人財(超上流人財)の育成施策と成果を紹介する.

1.はじめに

 事業改革,製品やサービスの開発などのビジネス・イノベーションを実現するために,超上流の技法が注目されている.超上流工程を確実に遂行し,課題に対する解決策(ソリューション)の実現を図るため,JISA(情報処理サービス産業協会)により策定された日本発で世界的に注目を集めている要求工学知識体系REBOKに基づき,超上流工程の実践手法HyThology を開発した[1].

 HyThology は2012年4月の公開後,80プロジェクトにその技術を提供し,社内のみならず超上流工程に取り組むユーザ企業からも計画的に作業を遂行できる手法として好評を得ている.本論文では,HyThology の開発の狙いと実践における課題と対策を紹介し,超上流工程を成功させるために必要な施策を明らかにする.

2.超上流工程の重要性と成功要因

 超上流工程は,IPA(独立行政法人情報処理推進機構)/SEC(ソフトウェア・エンジニアリング・センター)発行の共通フレーム2007 で規定されるシステム化構想の立案~システム化計画の立案~要件定義工程を指す[2].

 共通フレーム2007 では,超上流工程は企画プロセスと要件定義プロセスから構成される.企画プロセス(システム化構想の立案~システム化計画の立案)とは,ユーザ企業において,事業戦略を具体化し実現策を企画,投資と効果の承認を得てプロジェクトを発足させるまでの作業である.要件定義プロセスは個々のプロジェクトで,さまざまなステークホルダから要求を獲得,要件として定義し,設計・開発作業に繋げるまでの工程である(図1).

図1●超上流工程の位置づけ
図1●超上流工程の位置づけ

 日経コンピュータ誌の調査によると,システム開発プロジェクトで成功する割合はわずかに31%にとどまっており,失敗の原因は仕様変更の多発などの超上流工程の品質に起因している[3].超上流工程は,後続する開発プロジェクトの成功を左右するばかりでなく,IT投資効果を決定する重要な工程である.

 JUAS(日本情報システムユーザ協会)発行の企業IT動向調査2012[4] では,超上流工程に注力することが,システム化プロジェクトが成功し,運用でその目的を達成する大きな要因であることを示している.加えて,ビジネスで真に効果を上げるための品質確保の決め手として,IT投資の効果を決めるものは超上流工程であることを指摘し,経営者の主体的で責任ある関与を求めている.

 近年,ユーザ企業・ITベンダともに,超上流工程の重要性が認識されてきているが,さまざまな手法が提案され技法として確立されていない状況である.