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 情報システム開発の超上流工程では,新しいサービスや業務プロセス(ビジネス要件)の検討と,それらを実現するためのシステム要件の開発とを並行して進める必要がある.本論文では,ユーザ企業と開発ベンダが協力の上,ステークホルダ間における合意形成を段階的に進めることによって,ビジネス要件とシステム要件の検討を並行して進めることを可能とする手法「協創プロセスによる段階的合意形成手法= Ex アプローチ」に関して,事例を通じて紹介し,これを導入する効果・利点について述べるとともに,今後の課題を明らかにする.

1.はじめに

 本論文で「超上流」とは,図1に示すように,新しい事業(商品やサービス)を実現するためのシステム化要求を受けて業務要件を検討する,ビジネスレベルでの要件(以下「ビジネス要件」)定義を行う工程のことである[1].システム開発の超上流工程は,高品質で安心・安全なソフトウェアを開発するために,ステークホルダの要求を漏れなく分析して正しく理解し,その内容を仕様として正確に記述する工程として重要である[2].

図1●超上流工程(IPA(情報処理推進機構)による)
図1●超上流工程(IPA(情報処理推進機構)による)
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 一方,超上流工程で定義されるビジネス要件は,システム要件よりも先に定義され,かつ組織的に意思決定,合意形成されるべきであるとされている[3].しかし,現実の多くのシステム開発プロジェクトでは,ビジネス要件の検討とシステム要件の開発とが並行して進められている.本論文では,実際のシステム開発の現場での超上流工程が抱える課題を整理したうえで,協創プロセスによる段階的合意形成に着目した手法「Ex アプローチ」☆1に関して,事例を含めて紹介する.

☆1 「Ex アプローチ」,「Ex-Approach」,「ExApproach」は株式会社日立製作所の登録商標である.