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 車を財布にするには、スタートアップであるOWiNが提供するビーコンと、車載インフォテインメントシステムまたは専用アプリをインストールしたスマートフォンを連動させる。ビーコンをシガーソケットに差し込むと、店舗に近づいた時に店舗側の端末に信号を送る。決済に必要な情報は暗号化して処理され、約2秒で消去されるなど、セキュリティにも気を使った。決済に必要なネットワークはキャリアのLGU+が担当する。

 韓国でも最近は時間単位で車を利用できるカーシェアリングの利用が増えている。このため今後は、どの車でもスマートフォンとビーコンさえ持ち込めば、車に搭載されたモニターと連動して車の利用代金を含めて決済できるようにするという。

 ソウルは東京に比べて車を利用しないと移動に不便な場所がまだある。また駐車代が安いので、通勤に車を利用する人がとても多い。韓国は車庫証明がなく車を購入しやすいので、日本よりも気軽に車を買う傾向がある。だからこそソウル市内には駐車場も多く、ドライブスルーの店舗も結構ある。コネクティドカーコマースによって、ドライブスルーがさらに増えると見込まれている。

 韓国では、オンラインとオフラインをつなげる「O2Oサービス」が日常に根付いている。賃貸物件はアプリ経由で探し、気に入った物件があれば不動産を訪ねる。出前もアプリ経由でメニューと値段を見て注文。出前アプリで有名な「配達の民族」は、2016年の月平均出前注文件数が1100万件を超え、売上は年間849億ウォン(約85億円)、営業利益25億ウォン(約2.5億円)と黒字になった。

 O2Oの流れから、オンラインで注文・決済してオフラインで商品を受け取ることに慣れている韓国人は、コネクティドカーコマースもすぐに使いこなす可能性が高い。車を財布にしてオフラインの店舗を利用する新しいO2Oに期待が集まっている。

趙 章恩(チョウ チャンウン)
趙 章恩(チョウ チャンウン) 韓国ソウル生まれ。ITジャーナリスト。東京大学社会情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく解説する活動をしている。「日経ビジネス」、「日経Robotics」「ダイヤモンドオンライン」、「ニューズウィーク日本版」、「週刊エコノミスト」、「日本デジタルコンテンツ白書」などに寄稿。