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 2015年、韓国政府が小中学校で「情報」を必須科目に決めたときから、教育熱が高い韓国の親たちの間で、過剰なコーディング教育熱が沸き起こるのではないかと懸念されていたが、その通りになった。

 もちろん韓国の親も、コーディングを学ばせるのが目的になってはいけないと分かっている。しかし「コーディング教育を通じで子供の視野を広げてあげましょう。欧米では小学校1年からコーディングを学んでいます。グローバル人材になれるよう海外のサマーキャンプに参加させましょう」と誘われるとなかなか断れない。

 コーディング塾ビジネスに熱心なのは民間企業だけではない。自治体も小中学生を対象にした、夏休みコーディング教室を開催する。ソウル市の場合、小学生を対象に簡単なコーディングをして小型ロボットを動かす体験コースを開催する。1回1時間30分で参加費は約8000円だが、募集開始数分で定員に達した。

 少子化で授業料だけでは経営が厳しくなった大学も、収益事業として小中学生向け「夏休みコーディング教室」を開講し、募集を始めた。どの大学も平均的に4日間16時間の講座が約5万円と安くはない。

 昨年までは、似たような内容で開催していた講座は3万円程度だった。それが2017年は「クリエイティブな問題解決能力を学習して2018年に備える」という宣伝が加わり、受講料が2万円アップした。コーディング教育を英語で行う「グローバルコーディング英才教室」はさらに受講料が高くなる。

 一方、コーディング塾やキャンプを紹介する記事のコメント欄には「本末転倒」といった批判の書き込みが5000件以上あった。

 「論理的思考ができる子供を育てるためソフトウエアの仕組みを教えてみようという発想だったのに、いつの間にかコーディング技術者を養成しないといけないような雰囲気になっている。コーディングは暗記科目ではない」

 「コーディングはYouTubeやポータルサイトで検索すれば無料で学べるコンテンツがいくらでもあるのに。親同士の見栄の張り合いみたい」

 「コーディングはその辺の食堂に入って教えてくださいといっても教えてもらえるよ(プログラマーは非正規職が多く、生計のために自営業を兼業する人が多い)」

 小中学生向けコーディングビジネスが過熱する中、大手SI企業のLGCNSは社会貢献の一環として無料でコーディングを教える「コーディングジーニアス」教室を始めた。学生用のPCや実習用のロボットなど機材も全てLGCNSが用意し、学校まで行って教える。「コーディングの基礎」「教育版レゴ マインドストーム EV3実習」「スマートフォンのアプリ開発」「スマートフォン中毒予防」といったカリキュラムになっている。批判的思考と問題解決能力、クリエイティブな考え方、コミュニケーション能力、協働、といったことを学べるプログラムを目指した。2017年は中学校20校を訪問して教えることを目標としている。