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 今回もシステム案件の「上流」と「下流」での価値観や必要なスキルの違いについて解説します。今回のテーマは「抽象化」です。

 どんな仕事でも、「上流」から「下流」へと向かう仕事の流れは、多かれ少なかれ抽象度の高い概念やコンセプトを具体的な実行可能な形に残していく「抽象から具体へ」という流れをとります。

「抽象」は分かりにくい

 例えばシステム導入のプロジェクトで言えば、最も上流の企画の段階では「世界一の商品力をサポートする業界随一のシステム」といった大きなコンセプトから始まり、次第に基本設計、詳細設計と具体化されていきます。最後はユーザーに利用可能なシステムとして現実のものになります。

 また、上流で扱うのは、競争優位性を上げるとか、会社全体のコストダウンを図るといったユーザーの「上位目的」ですが、下流に行くにしたがって、具体的なハードウエアやソフトウエアといった「目に見える手段」に関心は移っていきます。言い換えれば、上流の抽象的な「理想」から、下流の具体的な「現実」へのシフトです。

 ここで、抽象化の産物である上流の仕事と、具体化の産物である下流の仕事の間ではまったく異なる価値観やスキルが求められ、本連載の他の視点でも見てきたような「上流と下流の不連続なギャップ」が存在するのです。

 「抽象化」や「抽象」は、一般的には非常に分かりにくい概念です。身の回りで「抽象的」という言葉が使われるのは、「あの人の話は抽象的で分かりにくい」といった場合です。反対には「具体的に説明してもらわないとよく分からない」ということが言われます。抽象=分かりにくい、具体=分かりやすいという構図で、「抽象的であること」は否定的に捉えられることがほとんどです。

 このように、理解するのが難しい概念であるが故に、なかなか上流側の思想が理解されません。ここに、仕事の上流へのシフトが難しい大きな要因の一つがあります。ではその「ギャップ」がどのように存在するのかを見て行きましょう。