松尾:「こないだ言ったことと違う……」と思いました。でもよくよく聞いてみると、「確かに本来は5万円かかる講座が5000円というのは安い。でも、Webで決済する価格として5000円は高すぎる」と。アプリのサービスに数百円なら払った経験はあっても、5000円払うという感覚はなかったんですね。
山内:ちなみに、高校生は自分で料金を払っているんですか?
松尾:大半は、保護者が負担されています。でも今は月額980円ですので、自分のお小遣いで払っている子もいます。
山内:なるほど。確かにお小遣いだと、5000円は高いですね。
松尾:はい。ただ、当時から懸念していたのが、あまりに安すぎると「安かろう悪かろう」のイメージがついてしまうのではないかということでした。そこで価格分析の手法で、「いくらなら買ってもいいか、いくらなら安いと感じるか」を調べました。そのギリギリのラインが、1000円でした。それで価格を980円にして、買い切りではなくて見放題にしようと考えたんです。
5000円の買い切り型のときは、例えば私立大学の受験生なら2~3科目ほど購入しているユーザーが多くいました。それで、顧客単価として1万数千円を設定していました。月額980円にしても、1年間使い続けてもらえば1万2000円ほどになるので、顧客単価としては同じくらいを見込めると想定しました。
こうして月額980円で見放題というスタイルに変更しました。ここから、徐々に有料会員が増え始めました。
山内:やはり980円という価格設定は大きかったんですね。今になってみれば一般的なスタイルですが、当時としては勇気が要ったでしょう。
松尾:当時は、相場がありませんでしたからね。
東京大学大学院情報学環 教授