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今も県外に避難する顧客のために──。
 福島県を基盤とする地方銀行、東邦銀行は2014年11月、県外避難者支援をきっかけとして、相続手続きの相談にコンピュータが24時間365日応えてくれる自動対話サービスを始めた。スマートフォンやタブレット端末を想定し、音声とテキストに対応。行員の負担軽減にもつなげた。

A氏「親が遺産を残していたようで…」
相談員「遺言書はございますか」
A氏「あったはずです」
相談員「遺言書の種類は公正証書遺言書でしょうか」
A氏「え、公正証書遺言書って何?」
相談員「公証人、遺言者、証人各々が署名捺印した遺言書です」

 相続の手続きや用語について、顧客の曖昧な質問によどみなく答える彼女の名前は「東邦未来」。福島県を中心に115の店舗を持ち、総資産額で東北2位の地方銀行である東邦銀行と、東芝ソリューションが共同開発した対話システム「相談手続きナビゲーション」である。冒頭のやりとりは、実際の対話を一部簡略化したものだ。

 この対話システムは、PCのほかiOS、Androidのアプリで使える(図1)。キーボードのないスマートフォンやタブレット端末での利用を想定し、会話は音声とテキストの両方に対応。東芝グループが持つ音声認識・音声合成と知的会話システム、東邦銀行の相談業務ノウハウを組み合わせた。

図1●「相続手続きナビゲーション」の操作画面
図1●「相続手続きナビゲーション」の操作画面
遺産相続の相談を、コンピュータが音声で自動回答
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東邦銀行 事務本部 事務企画部の若菜正典部長(右)と同企画部 事務企画課の古川裕章主任調査役(左)
東邦銀行 事務本部 事務企画部の若菜正典部長(右)と同企画部 事務企画課の古川裕章主任調査役(左)
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 質問応答システムを銀行業務に生かす試みとしては、米IBMが開発した人工知能システム「Watson」の導入を、三井住友銀行とみずほ銀行が計画している。ただいずれも、コールセンターで顧客と直接応対するのは人間の相談員で、Watsonは相談員に適切な回答を提案する側面支援、という位置付けだ。東邦銀行のシステムは、コンピュータが顧客と直接対話できる。

 このシステムは、東芝ソリューションが用意したクラウド環境で稼働する。東邦銀行が負担したシステム開発の初期費用は数千万円、システム利用料は月額では数十万円(いずれも日経コンピュータ推定)である。