PR

真の狙いは顧客データ活用になる新事業の創出か

 だが新会社による一連の取り組みを見るに、KDDIの当面の目標は顧客流出防止のためのビッグデータ活用かもしれないが、顧客データを活用したビジネス創出こそが最大の狙いであることが見えてくる。

 特に多くの機器から収集したデータを用いて新たな価値を生み出そうとするIoT関連の事業では、新会社によるデータ分析の強化に強い期待がかけられているという。また新会社では、KDDIの子会社でインターネットサービスや広告などの事業を手掛けるSupershipとの連携によって、ビッグデータを活用して広告のレコメンドを最適化する施策も進められているとのことだ。

顧客体験価値の向上だけでなく、IoTや広告など、新たなビジネスの価値提案にも新会社のリソースが活用されるようだ。写真は3月14日にKDDIが開いたデータアナリティクス活用に関する記者説明会より(筆者撮影)
顧客体験価値の向上だけでなく、IoTや広告など、新たなビジネスの価値提案にも新会社のリソースが活用されるようだ。写真は3月14日にKDDIが開いたデータアナリティクス活用に関する記者説明会より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 市場の飽和と少子高齢化によって純粋な新規顧客の獲得が困難になった現状、キャリアにとって最大の武器となっているのは、既に抱えている多数の顧客だ。実際、KDDIは様々な企業と組んで保険や電力、銀行などの生活系サービスを提供しているが、それは強い顧客基盤を持っているが故だ。

 その顧客基盤という武器をフル活用し、新たな攻めの戦略をとるうえでも、ビッグデータの分析に長けた企業と組む必要があったと言えよう。それゆえ将来的には、顧客体験価値向上で得た技術や知見をIoTなどの新技術やサービスに生かして、新たな市場開拓を進めていくと考えられる。

 とはいえ、顧客データを継続して獲得するためには、顧客自体の流出も防ぐ必要がある。まずはビッグデータ分析により顧客体験価値の向上で確実な実績作りが求められることになりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。