4月14日から16日にかけて熊本県を中心に発生し、大規模な被害をもたらした「平成28年(2016年)熊本地震」。その熊本地震を巡って、LINE社が打ち出した「LINE Out」を10分間無料で利用できる施策が、被災地にかえって迷惑をかけることになると問題視される騒ぎになった。大規模災害時、被災地の相手と連絡をとる手段には何が求められるのかについて、改めて考えてみたい。
熊本地震で打ち出したLINE Outの施策が批判
4月14日夜、熊本県内を中心にマグニチュード6.5の大規模な地震が発生し、16日にはさらにマグニチュード7.3の地震が発生するなどして、甚大な被害をもたらした「平成28年(2016年)熊本地震」。記事執筆時点(4月18日)でも余震が続いているほか、多くの人が避難生活を送っており、まだ落ち着いているとは言い難い状況だ。
14日の地震の発生直後より、モバイルやITに関連する企業の多くも、被災地の支援に向けた取り組みを打ち出している。携帯電話大手3社の公衆Wi-Fiスポットを「00000JAPAN」という統一のSSIDで、事業者を問わず無料開放する取り組みなどは、そうした事例の1つと言えるだろう(写真1)。
だが、そうした被災地支援の取り組みがかえってあだとなり、批判を集めてしまったのがLINE社である。LINE社は4月14日の地震発生直後より、同社のメッセンジャーアプリ「LINE」の音声通話機能を用い、固定・携帯電話に有料で通話発信できるサービス「LINE Out」を、1通話当たり最大10分間、無料で利用できる施策を打ち出したのである。
LINE社がこうした施策を打ち出したのには、安否確認にLINEを活用してもらいやすくする“善意”からであったようだ。日常的にLINEで連絡を取り合っている人であればLINE上で安否確認ができるだろうが、LINEを利用していない人の安否確認には活用できない。そこで、固定・携帯電話にも発信できるLINE Out(旧LINE電話)を、制限はあるものの無料化することで、そうした人達の安否確認にも活用してもらいたいというのが、LINE社の狙いだったと言える。
この施策はTwitter上で公表された直後より大きな注目を浴び、急速にリツイートされて情報が広がったほか、テレビでも紹介されるなどして急速に認知されることとなった。だが一方で、発表当初より「この施策には問題がある」という声も上がり始め、LINE社は善意とは逆に批判されることとなってしまったのである。