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 打ち手を見つけたかに見えた佐藤主任でしたが、そのまま実行していたら、会社は資金繰りの悪化で危険な状況になっていたかもしれません。

 ここで大事なのは、社長が示した「既存店の売り上げが減少している」という課題に対して、そのまま反転させて「既存店の売り上げを増大するには、どうすればいいか」について検討するのは、必ずしも正しいとはいえないということです。

 これが、論点/課題設定の重要さです。特売スーパーの事例でいえば、売り上げを増大させるための打ち手が、かえって会社の経営を危機に陥れる可能性があったのです。

内山「どうだ、我が社を救う策は見つかったか」

佐藤「はい。まず、既存店の売り上げ低迷の原因から説明します。結論から言うと、若い子育て世代の客単価が下がっていることが原因です。データ分析からは、この層が購入する商品が、より安価なものへとシフトしているのが分かります」

内山「うーむ。昨年の増税の影響がまだ続いているのだろうか…」

佐藤「とはいえ、すべての店舗が売り上げを落としているわけではありません。次に、店舗別に3年前からの売り上げの変化率を見て下さい(図2)」

図2●店舗別の売上高変化率の分布(変化率は3年前との比較)
図2●店舗別の売上高変化率の分布(変化率は3年前との比較)
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内山「おお、大きくばらついているな」

佐藤「おっしゃる通り、この棒グラフからは、売り上げの変化率が+30%から-40%まで大きくばらついているのが分かります。ではなぜこのばらつきが起きているのか。それは次の散布図(図3)を見てください」

図3●売り上げ変化率と店舗特性に基づく散布図
図3●売り上げ変化率と店舗特性に基づく散布図
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内山「これはどう見ればいいのだ?」

佐藤「横軸は、お客様に占めるシニア層の比率です。縦軸は、各店舗の全仕入れ金額に対する高級魚の仕入れ金額の比率です。つまり、右上ほどシニア比率が高く、かつ高級魚の比率も高いです。点の色は、店舗の好不調を示しています。青の点は売り上げ変化率の上位25%の『好調な店舗』、赤の点は下位25%の『不調な店舗』、緑の点はその他です」

内山「なるほど」

佐藤「注目すべきは、青の点がほぼ右上に固まり、赤の点は左に固まっていることです。つまり、シニア層の比率が高く、かつ高級魚の品揃えが豊富な店は、売り上げが伸びています。高級魚に限らず、シニア層向けの『ちょい高商品』の品揃えができている店舗は売り上げが好調です。ちなみに、客数についてはどの店舗もおおむね横ばいのため、売り上げの差は客単価でほぼ説明できます」

内山「うーむ、そうか。だとすると…」

佐藤「シニアの来店構成比が高い店舗に、シニア受けする『ちょい高商品』を置くことで、全体として客単価の向上を図ることができます」

内山「分かった。それはぜひやろう」

佐藤「ただ、実行に当たっては一つ重要な注意点があります」

内山「ほう。それは何だ?」

佐藤「当社で抜本的な対策を取る必要があるのは、売り上げだけではありません。在庫回転率(販売を通じて1年間に在庫商品が何回入れ替わったかを示す指標)も悪化しており、資金繰りに大きな影響が出ています。この状況の中、シニア向けの『ちょい高商品』を多品種揃えて在庫を持つようにすると、さらに資金繰りを悪化させる可能性があります。経理に試算してもらったところ、資金のショートも懸念されるとのことでした」

内山「なんと!それは確かに見落としていた」

佐藤「現場では、欠品の防止を意識するあまり、過剰な在庫を抱える店が増えています。安価な商品については商品点数を絞る、エリアマネジャーのKPIを見直すなどして、在庫回転率を高める策を同時に取る必要があります」

内山「わかった!佐藤主任に分析をお願いして良かったよ。ありがとう!」