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 前回までは、データ分析に必要な情報システムの準備と、データエンジニアに必要なスキルを解説しました。

 今回は実践編として、業績分析のプロセスを紹介します。特に、業務分析のカギを握るKPI(重要業績指標)設計のコツを詳しく解説します。

分析業務の中心は業務分析

 データ分析チームに対して日常的に求められる業務は、以下の4つに大別されます。

(1)業績に関する分析
・業績が良いのは、悪いのはなぜか?
・今後どうすればいいのか?
(2)施策提案に関する分析
・提案している施策を打つとコストに対してどの程度のリターン(売り上げ、利益)が得られるのか?
・なぜそのリターンが得られるのか?その証拠は?
(3)予算策定に関する分析
・売り上げ、コスト、利益、各種KPIの予算値は?
・なぜその数字が妥当なのか?
(4)その他特定目的の分析

 この中でも「(1)業績に関する分析」は多くの企業で頻繁に、また短納期で求められます。

 筆者も複数の企業で、週次の業績報告を担当しました。多くの場合は毎週月曜日の午前中、遅くとも昼に前日(つまり日曜日)までの1週間の業績を集計し、社長ほか役員に報告しました。一番朝早い企業は午前8時から報告会があったので、当日朝7時前から準備しなければならず、間に合うようにKPIダッシュボードを開発するなど工夫したものです。

 業績好調・不調の原因を探るといっても、業績は様々な要素が絡み合った結果として現れるため、その原因を探り当てるのは難しい…と思われるかもしれません。しかし、KPIが適切に設計できていて、その数字がタイムリーに、必要な切り口で参照できるようにさえなっていれば、好調、不調の要因はすぐに探り当てることができます。

 逆にいえば、KPIが適切に設定されていない、あるいは設計したKPIに関係なく手当たり次第に分析を行ってしまうと、情報が多すぎて答えにたどり着けません。また、システムの不備でKPIの数値をすぐに参照できないようだと、やはり素早く答えにたどり着けません。

なぜ売り上げが伸びたか?を分析

 では、第3回、第4回で紹介した小売りチェーン企業「特売スーパー」を例に、業績に関する分析の基本的なプロセスを解説しましょう。

 同社のデータ分析チームが売り上げの対昨年同期比(昨対)を集計したところ、2015年6月第2週の業績が、前4週平均と比較して良くなっていることが分かりました(図1)。なぜ、業績が向上しているのか。社長への週次報告を想定し、分析してみましょう。

図1●特売スーパーの売り上げ推移
図1●特売スーパーの売り上げ推移
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 まず特売スーパーが使っている売り上げ系のKPIと、KPIの分析に必要な「切り口」を図2に示します。

図2●特売スーパーの売り上げ系KPI
図2●特売スーパーの売り上げ系KPI
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 売り上げをまず「客数」x「客単価」に分解し、「客単価」は「顧客当たり買い上げ点数」x「一点単価(購買された商品の平均単価)」に分解しています。このそれぞれのKPIが、右記の切り口全てで分解できる、という構造になっています。

 このKPI設計に基づき、各KPIの推移をまとめたのが図3です。

図3●特売スーパーの売り上げ系KPI推移
図3●特売スーパーの売り上げ系KPI推移
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 この図から分かるのは、客数には大きな変動がない一方、客単価が6月第2週に大きく伸びていることです。さらにその中でも、買い上げ点数ではなく、一点単価が伸びていることが分かります。ではなぜ一点単価が伸びたのでしょうか?