野村総合研究所(NRI)前常務で金融ITソリューションやクラウド基盤の構築・サービス立ち上げなどの責任者を歴任した楠真理事が、「強いIT」でイノベーションを実現する処方箋を指南する。豊富な経験に基づき、強いITの実現を阻害する要因の分析し、解決策を示唆する。現場の活用法、ビッグデータやクラウドといった新技術・新トレンドがITに与える影響の分析、システム会社やコンサルティングの活用法など、幅広い視点で縦横無尽に語っていただく。

NRI楠真 強いITはココが違う
目次
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シュリンクフレーションからイノベーションへ、また逢う日まで
「シュリンクフレーション」という言葉を聞きました。色々な商品で価格やパッケージが変らないまま、サイズや内容量だけがシュリンク(縮小)している状態のことを言うようです。私たちのIT業界はまさにシュリンクフレーションの状態です。
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日本が勘違いするカスタマーエクスペリエンス
米国の企業にとって「カスタマーエクスペリエンスを向上」はデジタル時代の重要なマーケティング戦略です。日本でも「顧客本位の営業」という話はどこでも聞かれます。でも日本の「顧客本位」はただひたすら「お客様は神様です」という話で、ペコペコするばかりです。
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ハイタッチからノータッチへ、変わるIT営業
年末年始と挨拶まわりに忙しい季節です。日本の企業文化に根付いている年始の挨拶まわりは、トップ営業にとって重要なタイミングです。ところが、あるITベンダーの営業がこんなことを言っていました。「米国の本社からは、ハイタッチどころかノータッチで営業しろって言われているんですよ」
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レガシーとデジタルが交代する2018年
2018年がスタートしました。今年の干支は戊戌(つちのえいぬ)、よく似た漢字が2つ並んだ年です。戊は成長を表し、戌は終末を表します。60年前の戊戌も新旧交代の年でしたが、2018年はIT業界の新旧、レガシーとデジタルの交代の年になりそうです。
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アマゾンと戦うボヨヨン会社
「やっぱり、我が社もボヨヨンですかね」。エレクトロニクス業界のコンサルタントとして飛び回っていた20代の頃、ある大手素材メーカーの部長が私に尋ねた質問です。私が彼に説明していたのは、エレクトロニクス産業と素材産業の違いについてです。
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シリコンバレーで日本企業が嫌われるワケ
「シリコンバレーで日本人が嫌われている」という記事がある新聞に掲載されました。私も毎年何社も米国企業を訪問していますから、日本企業が嫌われているなんて言われるとぞっとします。今日会ったあの人たちも、ミーティングが終わった後で「もう来るな!」と思ったのかもしれません。
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変質する米国FinTech、デジタルトランスフォーメーションの内幕
「FinTechベンチャーは散々ですよ。かなり厳しいと思います。金融で他人のお金を預かるには信用が必要ですが、ベンチャーには超えられない壁なんです」。ニューヨークで会ったFinTechベンチャーの元経営者はそう語りました。
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「AWSを使わないことはリスク」を痛感した米国の1週間
先週、米国のラスベガスを訪ねました。11月27日から12月1日に開催されたAWSの「リ・インベント(re:Invent)」に参加したのです。リ・インベントの来場者数は4万3000人に達したそうです。2015年が1万9000人、2016年が3万2000人と増加ペースは鈍っていません。
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IT業界はAWSを中心に回っている
今週はAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のイベント「リ・インベント」がラスベガスで開催されます。この一年、アマゾン・エコーと違って、AWSは比較的静かな年だったように感じています。しかしアンディー・ジェシーCEO(最高経営責任者)率いるAWSですから、きっとすごい発表が待っているはずです。
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変わりゆく中国オフショア事情
数年ぶりに上海を訪問しました。上海市政府主宰のイベント「Shanghai Forum on Software Trade 2017」で講演するのが目的です。このフォーラムは上海ベースのオフショアソフトウエア開発会社の業界団体が中心となり、2003年から毎年開催しています。
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論文のお手伝いは、いたしません
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が母校ハーバード大学の卒業式に登壇して話したスピーチが大きな話題を集めました。こうした話を聞くにつけ、米国企業の大学や学生に対する期待の大きさを実感します。
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頑張れ、日本のベンチャー
日本も米国も株価が好調に推移しています。ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は過去最高値をどんどん更新していきます。とりわけ注目を集めているのが「FANG」です。フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字を並べたものです。
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道なき道を行くデジタル革命は「do something different」
Oracle OpenWorldに続いて、ベイエリアのIT企業を数社訪問しました。その1社がデル テクノロジーズです。デルEMCのバーティカル戦略を聞かせてもらおうと、テクノロジー担当バイスプレジデントのジョシュア・バーンシュタインさんを訪ねました。
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クラウドが加速するバーティカル時代、ユーザー企業の生き残り策
オラクルが狙うのはクラウドが当たり前になった世界です。そこは同時にAWSやマイクロソフト、グーグルなどあらゆるIT企業が狙っている世界にほかなりません。しかもクラウドサービスは必然的に、どの企業が手掛けてもバーティカルソリューションになる傾向が強くなります。
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オラクルが「革命の年」に放つクラウド宣言
オラクルのカンファレンス「Oracle OpenWorld(OOW)」に来ています。毎年米国サンフランシスコで開かれているOOWは、IT業界最大のイベントの一つです。今年は175カ国から6万人が参加したそうです。大勢のIT関係者がこのためにサンフランシスコへやってきたということが分かります。
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暇人が悩む「内製かアウトソーシングか」
大企業がシステム開発や保守運用をSIベンダーなどに丸投げする弊害はかなり大きいと思います。一方で「システムの内製化が必要だ」との意見がいろいろなところで出ていますが、状況は一向に改善されません。内製かアウトソーシングか。これは日本のIT業界における古くて新しい問題です。
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SIベンダーの体力に頼る日本の大手ユーザーの憂鬱
「欧米はどんどんクラウドへ移行している。日本はクラウド化のスピードがなぜ遅いのか?」。外資系ソフトウエアベンダーY社の外国人幹部、Fさんにこんな質問を受けました。私は「ユーザーもITベンダーも積極的なクラウド化を望んでいない」という背景を説明しました。
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SIベンダーの強さを決める「体力」
SIベンダーの体力は比較的よく話題に上ります。最も体力があるのはいわゆるメインフレーマの4社です。民間の案件ではあまり耳にしませんが、公共案件ではNTTグループの体力が群を抜いています。NRIは残念ながら「体力がありますね」とほめられることはあまりありません。
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二択で決めるマネジメントに明日はない
ITの世界では輝かしい理想の姿をもてはやし、「そこへ行かなければ明日はない」とする二択の論調が以前からよく見られます。どうも私たち日本人は、こういう二択が大好きなのではないかと思えてなりません。
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「助けの来ない籠城戦」で全滅しないために必ずすべきこと
私たちが抱いてきたITコンプライアンスの考え方は、江戸時代の鎖国のようなものです。外部とネットワークをつなげない。システムの心臓部は堅牢なデータセンターで物理的に隔離する。本番環境や開発現場に知らない人を入れない──。関所で「入り鉄砲に出女」を管理した江戸時代と同じです。