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 日本の社会では、何か起きた時の謝り方が結果を大きく左右することがあります。政治家や大企業のトップなどが謝罪会見を行うたびに、「彼も謝り方を知らないねぇ」などという勝手な論評がいつも居酒屋の酒のつまみです。

提供=123RF
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 テレビの会見では同じような場面が繰り返されていますが、謝り方の違いによって結果は大きく違います。どちらかというと「まずい謝り方」をしたときのダメージが大きいというべきでしょうか。

 金融機関のリテール営業部門には「お客様相談係」などという名前の部署が必ずあります。消費財を扱うメーカーにも同様の部署があるようです。

 こうした部署の業務の中心は何らかの理由でクレームを入れてきた顧客への対応です。クレームを入れる顧客には、それなりの理由があるわけですが、文句を言われる「お客様相談係」の担当者は、ほとんど間違いなくクレームの原因と直接関係はありません。

 担当者は自分がやったことでもないトラブルに対して、会社の代表としてクレームを聞き、場合によっては謝罪するわけです。「お客様相談係」がプロとしての対応をすることによって、顧客満足度が大きく違ってくるのは間違いありません。

 謝罪によって新しい関係が生まれることもあります。私は日本経済新聞の渡辺洋之執行役員と20年来のおつきあいをさせていただいています。共通の知り合いには「どういう経緯で知り合いになったの?」と聞かれることが良くありますが、彼と知り合ったきっかけも実は謝罪でした。

 マイクロソフトがWindows NTで日本のエンタープライズIT市場に攻勢をかけ始めたころのことです。マイクロソフトはエンタープライズ市場を攻略するために、「ソリューションパートナープログラム」というパートナー戦略を打ち出していました。SIベンダーをパートナーとして取り込んで、Windows NTをどんどん売り込んでいこうという作戦です。マイクロソフトの呼びかけに多くのSIベンダーが応えました。そのなかの最大手だったのがNTTデータと野村総合研究所(NRI)でした。

 当時、日経BP社のある雑誌がマイクロソフトの幹部に取材して、ソリューションパートナーに関する記事を書きました。きっとマイクロソフトの幹部は少し調子を上げすぎたのでしょう。「NTTデータだろうが、NRIだろうが、マイクロソフトが言えば何でもする」といった趣旨の発言をしたようです。そしてそれがそのまま記事になりました。

 NRIの当時の広報部長はカンカンになって怒りました。はじめにマイクロソフトへクレームを入れたようですが、「そんなことは言ってない」の一点張り。平行線の結果、記事を書いた若手記者が謝罪にやってくることになりました。私はマイクロソフトとのアライアンス担当として、その場への同席を求められました。