クレジットカードの次は銀行です。銀行で最も手続きが合理的だったのはS信託銀行です。この銀行は外資系銀行のリテールバンク部門を引き継いでおり、サービスは電話でのやり取りを基本的に想定しています。だからコールセンターのやり取りはカード会社とよく似ています。キャッシュカードを紛失したと言うと、新しいカードを再発行して送ってくれるのも同じです。
カード再発行の手数料もかかりませんでした。私が利用していたカードは古いものでICチップを搭載していなかったので、ICカードについては新規発行となり、今回に限って再発行手数料がかからないのだそうです。新しいICカードは1週間もせずに自宅に送付されました。
「あ、これは利用できないんです」
S信託銀行がカード会社と異なっていたことが一つだけあります。書留ではなく、本人限定受取という日本郵便のサービスでカードが届いたことです。
このサービスは受け取る際に本人確認が必要です。私は郵便局の配達員に、最近交付を受けたばかりのマイナンバーカードを提示しました。ところが配達員は事もなげに「あ、これは利用できないんです」と言います。
マイナンバーカードは本人確認の際の公的な身分証明書として利用できます。マイナンバーカードの公式サイトでも、そう明記されています。それが本人確認に利用できないとは、いったいどうしたことでしょうか。マイナンバーについてはちょっと詳しいところを見せようと思い、食い下がりました。
「それはどうしてですか? ひょっとして総務省の指示ですか?」
「マイナンバーカードの番号を控えることが禁じられているので、本人確認書類には利用できないんです」
何と、本当だろうか。確かにマイナンバー制度ではマイナンバー(個人番号)そのものを内容に含む個人情報を「特定個人情報」と呼んでいて、これを漏洩した場合には刑事罰が科せられるということになっています。
私のマイナンバーを下手に転記したら、どこかに無くしてしまうリスクがあるし、それによって誰かが逮捕されることになったらそれこそ大変です。ところが私の手元にあった、本人限定受取の手続きが書かれた郵便局の資料を見ると、マイナンバーカードで本人確認ができると書いてあります。